■JR東海道本線/南武線/京急本線~東急東横線/新横浜線(臨港バス:川51系統)
川崎市と横浜市の市境を跨ぐバスは意外に多く、東急新横浜線の新綱島駅と川崎駅西口を結ぶ川51系統もそのひとつ。新綱島駅(および手前の綱島駅入口バス停)から東横線の綱島駅までは歩いてすぐなので、東横線から川崎駅に抜ける際に武蔵小杉駅を通らずに済む「抜け道」としても機能する。
横浜市鶴見区北部・港北区東部と川崎駅の間に広がる鉄道空白地帯を東西に貫くため、輸送障害が起こらなくとも平時から至便な路線である。その特性上本数が多めに設定されており、平日日中でも毎時5本、平日朝7時台には9本もの本数が確保されている幹線級の路線である。
経路上に渋滞の名所として悪名高い「末吉橋」と「大綱橋」を含むためやや遅れがちなのが玉に瑕だが、入場規制のかかった駅前で途方に暮れる時間を考えれば、それを差し引いても両駅を短絡できるメリットの方が高いといえるだろう。
そしてこの路線が鉄道代替ルートとして威力を発揮する場面といえば、南武線が止まった時である(考えたくもないが)。貴重な南北軸という特性上、平時でさえ凄まじい混雑ぶりで知られる南武線だが、朝ラッシュ時に止まろうものなら川崎駅の北口改札は阿鼻叫喚の様相を呈する。
そんな時、ヒトは自然に「なるべく本来の路線(ここでは南武線)に沿って移動したい」と考えるためか、南武線のお客は並行路線である東急バスの川32系統や臨港バスの川55系統、川崎市バスの川71系統(いずれも武蔵小杉駅に出られる路線)などにどっとなだれ込む。しかし、それらの路線は小向に向かう人をはじめとした通勤客で非常に混み合っており、有事には積み残しも免れない。
しかし出勤や待ち合わせの時間が刻々と迫る中、ヒトは往々にして冷静さを欠き、判断力も低下する。まして「新綱島駅」と表示されたバスに乗り込もうなどとは思わない。しかし、川51で東急線に出てしまえば武蔵小杉まではすぐで、そこからバスを乗り継げば南武線の各駅まで悠々と出られる。
地図上では大きな遠回りに見えるが、混み合うバスに殺到し積み残される群衆を横目に、あえて見当違いの方向へ向かうバスで川崎駅を脱出するのは最高に爽快だ。もちろん逆ルートでの利用も可能なので、こちらも是非覚えておいてほしい。
圧倒的な効率性を誇る半面、一度その機能が停止すれば私たちを容赦なく陸の孤島へと導く現代の鉄道ネットワーク。駅や車内で運行再開をじっと待つのか、それともパニックに陥る群衆を尻目にあさっての方向へ向かうバスに乗り込み、涼しい顔で別ルートへの脱出を図るのか。バス路線を知っているか否かで明暗が分かれるシーンは、確かに存在するのだ。
今回紹介した旭6系統、市03系統、そして川51系統は、いずれも平時はごくありふれた生活路線に過ぎない。しかし、広域の路線図という俯瞰した視点を持てば、それらは分断された鉄道路線の隙間を縫い、放射状の交通網を直交するように貫く最強のバイパスへと鮮やかに姿を変えるのだ。
都市の地形や路線網をつなぐこれらのバス路線を「手札」として懐に忍ばせておけば、忌まわしい混雑や理不尽な足止めに対して、少しだけ主体的に抗うことができる。次にあなたが輸送障害に直面した時、こういった路線の検索とアレンジをすることによってその苦難が少しでも軽減されれば幸いである。
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