鳥取県から東京へ、米子発と鳥取発との2路線3社体制での運行は大胆だった。車体デザインは3社共通、そしてオリジナルデザインも考えられた。それはマスコミからも大きく取り上げられ、抜群の宣伝効果をもたらした。
●キャメル号(運行会社:日本交通 共同運行会社:日の丸自動車 相手会社:京浜急行電鉄)
鳥取バスターミナル〜浜松町バスターミナル・品川バスターミナル
乗車・撮影日:1989年3月
(記事の内容は、2022年9月現在のものです)
執筆・写真/石川正臣
※2022年9月発売《バスマガジンvol.115》『思い出の長距離バス』より
■鳥取〜東京間の2路線を3社のバス会社が協力体制を敷く
鳥取県の砂丘をイメージさせる動物、ゆったりとした3列シートの夜行は、ラクダをモチーフに宣伝し、キャメル号というマスコットネームが与えられた。
日本一の長距離路線を更新したキャメル号は、1988年5月開業と夜行路線の中でもトップクラスの早い開業だった。
東京までの路線を鳥取県最西端の都市である米子、そして県庁所在地の鳥取の2路線を、県内全域で路線バスを運行する日の丸自動車(日の丸)、日本交通(日交)そして東京の相手会社、京浜急行電鉄(京急)3社で運行する。
開業日当日の東京側品川では、多くの報道陣が見守る中、関係者らによるテープカットと、大胆なデザインの一番便が多くの人たちに見送られて発車して行った。
乗車してみたいと思い、乗る機会をうかがったがいつも盛況で、鳥取県の常連客も定着し2台運行の日も多いということだった。そしてついに、開業から1年近くが経過した翌春の3月に鳥取を訪れることができた。
■乗車率が高く2台運行が当たり前だった活気ある時代!!
乗車したのは週末とあって、この日も2台運行。1号車は京急だったが、乗車車両は2号車で日交だった。
乗車完了して時刻となり、鳥取バスターミナルを後に発車する。今ではすぐに高速入りするが、開業当初はしばらく国道をひたすら走る。モニターテレビが楽しいコンテンツ流し、乗客は画面に夢中だ。
ようやく高速入りすると、加西S.A.に入りすぐにトイレ休憩。加西S.A.では米子発のキャメル号2台と合流。ここからは4台並んでの走行となる。
夜間走行のため、車内は消灯したがなかなか眠れない。気になるのはすれ違う東京発の夜行便だ。深夜だがまだこの当時夜行路線はそんなに多く走ってはいないので、ひとつひとつ確認できた。
一畑電鉄のバスが走り行く。それはこのキャメル号の日本最長距離を塗り消した、出雲行き「スサノオ号」だ。その後、小田急秋田便の色違いが走り去った。これがさらにスサノオ号の最長距離を塗り消した、広島行きの「ニューブリーズ号」だ。
さあ今度はどんな長距離の路線ができるだろう。やっと眠りに入り次に目覚めたのがまだ暗い富士川サービスエリア、東京を目指してラストランだ。
そして前方カーテンが明けられ起床時刻となった。ゆっくりと走る首都高、浜松町バスターミナルに到着し、ほとんどの乗客が降車。残った乗客は、洗面、シャワー設備のある出来たばかりの終着、品川バスターミナルで降車した。