再開発に次ぐ再開発によって工事が、という意味でも“終わらない街”・渋谷。駅前に手が入り、周辺をとりまくバス停も仮の場所に移動して何年か経つが、そのバス停をちょっと観察してみると、他にはない不思議なオーラを放ち、バス趣味の興味を誘う。
文・写真:中山修一
(渋谷駅前の写真付き記事はバスマガジンWEBまたはベストカーWEBをご覧ください)
■東京のビッグシティ・渋谷駅前のバス乗り場
JR線と東急・東京メトロ各線の、渋谷駅に隣接する形で置かれている路線バスの乗り場は、おおまかに東口と西口の2カ所に分かれる。
大体ながら、東口は「渋谷駅前」、西口は「渋谷駅」と、停留所名の末尾が“駅前”か“駅”かの違いで、東と西の区別が付けられなくもない。
ここではモヤイ像が置かれている側の西口に注目していこう。渋谷駅は電車と並び路線バスも数多く出入りしており、西口だけでも20以上のバス系統が発着している。
バス事業者も複数にのぼり、西口を発着ポイントにした、特に系統の数が多いバス事業者といえば、東急バスと京王バスだ。
■既にずっと“仮”だった? 渋谷駅西口バス停
西口周辺の再開発工事が本格化したのは、2022年4月のことだ。フォーマルには「渋谷駅街区土地区画整理事業」と呼ぶらしい。
それ以前の西口駅前の路線バス事情はどうだったか……これまで西口の象徴的な建物だった、1965年築の東急プラザ(渋谷東急ビル)の向かいに、規模の大きなバス乗り場があった。
東急プラザ前の歩道に沿ってバス専用レーンを作り、停留所を数箇所に設置したほか、一般道を挟み横断歩道でアクセスする、バス乗り場の島が作られていた。島に停まるバス車両は、東急プラザに対して東急バスが正面、京王バスは後ろを向く形になっていた。
当時の西口バス停は“完成形”の姿だったと言えるが、それが見られたのも2015年頃まで。西口が工事中の仮の状態となり、何気にもう随分経っていたりする。
■場所がなくてもガンガン押し込め!
西口の工事が本格化した2022年4月、該当区域を作り替えるのに合わせて西口バス乗り場は閉鎖、ほとんどの停留所が近くに移設された。元々バス停のあった場所は、工事の常設作業帯になっている。
現在のことろ、一般道沿いにバスの発着バースを設け、23カ所の停留所を系統ごとに配置(うち2カ所はオフセット)。一般道の上り線と下り線の中央部分にバス車両専用の転回及び待機レーンがある。
よくよく観察していくと、余裕が全くない場所にスペースを無理矢理作って押し込んだような、バスの本数に対して、極端なまで絞り上げた乗り場の圧縮感と手狭さが、なかなかユニークで興味深い。
一般道沿いのバス停群は、厳密に言うと停留所の数が多くても、一般車が入ってこられるため「バスターミナル」の枠組みから外れるのだが、バス専用の転回レーンにも停留所が複数あり、転回レーンだけ見ると分類上はバスターミナルになる。
普通のバス停群とバスターミナル両方の性質を備えたハイブリッド構造である点が、仮の西口バス乗り場で注目したいポイントだ。これとよく似た他の場所に、町田バスセンターが挙げられる。
さらに、世界的に有名なスクランブル交差点ギリギリまで、転回レーンのカーブが食い込んでいるのも必見。
信号が変わる度に大勢の人々が行き交うゼブラのすぐ隣をバスが旋回していくという、あまり見たことのない不思議な景色を作り出している。