昨今、都市部では特定小型原付が街中を闊歩している。様々な問題や批判が方々から寄せられているのも事実だ。バスから見た特定小型原付は何が問題なのか。実際に利用してみたのでレポートする。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■特定小型原付とは?
規格を満たしたいわゆる電動キックボードのことを特定小型原付と称するが、最近では座席のついたものも登場している。この名称は免許の種類ではない。そもそも免許は必須ではない。原付という名がついているが、免許が必要な原動機付自転車とは根本的に異なる。
しかし原動機(モーター)が付いていることから、保安基準を満たし、登録(正式には自治体の課税標識をつける)をして、自賠責保険をかけなければならないのは原付と同じだ。
しかし特定小型原付は軽車両のカテゴリーなのでヘルメットが必須でないことや、一方通行の規制対象外な道路もあり、速度を制限する装置を稼働させれば歩道を通行できる場合がある等の特殊な取り扱いが多い。
16歳以上であれば免許不要で乗れ、個人で購入するというよりも街中での手軽な乗り物としてシェアサイクルのような形式での使用が多いように見える。
■一般的な問題点
特定小型原付のこれまでの一般的な問題点は、主に運転者の無知と勘違いに由来していることがほとんどだろう。飲酒運転はいうに及ばず、二段階右折をしない、自転車のように歩道を走行する、(自転車でもダメなのだが)信号を無視する、歩行者の保護義務を果たさない、右側の車線に出る等々の運転免許を持つ人からすれば「常識」を超えた運転からくる違反や事故が絶えない。
自動車を運転している側からすれば周りは運転免許を持って走っている車両ばかりだから相互に交通ルールは知っているという認識で運転している。そこにルールを知らない特定小型原付が走るのだから、どのような行動に出るのかわからない恐ろしさはある。
これが制度上の問題で、免許を持っていれば最低限の交通ルールは知っているはずなので、運転可能な者を原付以上の免許所持者にすればよかったのだろう。よって普段の自転車程度の感覚で走られたのではたまったものではないというのが多くの声だ。
■バス停車時
特定小型原付は左側の車線を走らなくてはならないことになっている。路線バスも通常は左側の車線を走り、バス停が近づくとバスベイに入り停車する。その減速した時に抜いていく特定小型原付をよく見かける。
時速20キロメートルしか出せない特定小型原付がバス停に寄っていくバスの横を抜きにかかられてはたまらない。サイドのミラーでは11mもある路線バスの前から後ろまでのすべてを死角なく見通せるようにはなっていない。見えなければどうなるかは0.2秒考えればわかる。
どちらが悪いの問題ではなく、ヘルメットもなくほぼ丸腰な特定小型原付と大型バスとでは命あっての何とかなのだ。
■バス発進時
そして右ウインカーを出してバス停から出るときに、無理に右から抜いていく特定小型原付も多い。右後方からの後続車両とバスのすぐ右側はミラーと目視で確認はするが、音もせず時速20キロメートルで細い車体が真横にいても見えない。
もし原付や自動二輪の免許を持っていれば、時速20キロメートルでバスの横を通過するにはフルスピードでも約2秒かかり、バスが発進してしまうと無理だと判断ができるので、後ろで待つことだろう。または大型免許を持っていれば、この車体ならばどこが死角で、このまま行っても運転者からは見えないので自分の身が危険と判断ができる。
そういう判断ができるのは免許をもってそっれぞれの立場で運転の経験があるからであって、免許不要で運転ができるとはいえ事故にあってしまってからでは二度と乗ることはできないかもしれないのだ。
その点でも、最低限の運転免許の保有を義務付けるべきだったのかもしれない。そうすれば警察官が違反を現認しても免許証を持っている限り「知らなかった」は通らないからだ。