北海道留萌市在住の写真家・佐藤圭さんが撮った貴重な動物、風景写真をお届けする週末連載。第6回は、クマタカです。
クマタカは、ワシ並みに大きな日本最大のタカです。いかにもハンター然とした鋭い顔、羽を広げたときの美しい縞模様、被写体としては最高レベルの鳥です。
絶滅危惧種に指定され、出会うことが難しいクマタカですが、圭さんは厳冬の森に身を隠し、精悍な姿を見事にとらえています。とくとご覧ください。
写真・文/佐藤圭
画像ギャラリー……「クマタカを探せ!」あなたは見つけられますか?
めったに出会えない「森の忍者」
クマタカは、英語で「MOUNTAIN HAWK-EAGLE」と呼ばれています。日本語に訳せば、「ワシのように大きな、山のタカ」となります。
ワシとタカは、生物学ではどちらもタカ目タカ科に分類され、違いはありません。大きいものがワシ、小さいものがタカと名付けられているようですが、例外もあります。
そのひとつが、このクマタカで、体長は70〜80cm、翼長は160〜170cmと、日本最大級の鳥類であるオオワシやオジロワシには若干劣るものの、猛禽類の中ではかなり大型です。
「クマ」には巨大さを表す意味もあるので、「クマタカ」と名付けられたとする説もあります。漢字では、「角鷹」「熊鷹」となります。
海岸など水辺を生活圏とするオオワシやオジロワシと違って、クマタカは森をエサ場として森の生態系の頂点に君臨しているので、「森の王者」と呼ばれています。
また、1日のなかで活動する時間が短く、ほとんどの時間、木の枝で寝ているか獲物を待ち伏せしているので見つけるのが難しく、「森の忍者」の異名もあります。
鷹狩は、飼いならしたタカによって野うさぎなどを狩る猟です。古代からユーラシア大陸、北アフリカの全域で行われており、戦国時代から江戸時代には、戦闘訓練の一環として将軍や大名が好んで行っていました。
クマタカも、その姿の美しさ、狩りの優秀さから、猟のためにタカを飼う鷹匠(たかじょう)たちにとても愛されていたようです。
クマタカは、タカ特有の縞模様がとても美しいのが特徴です。そのバランスの良さは世界一の美しさかもしれません。
弓道の矢にクマタカの羽を使用したものを見たことがありますが、4本で10万円もしました。絶滅危惧種として保護されているクマタカの羽は稀少なのでしょうね。
現在、クマタカを捕まえることは、法律で禁じられています。犯罪ですので、絶対にやらないでください。
幼鳥の頃は、灰色に近いアイスブルーの瞳をしていますが、成長するにつれて、黄色、オレンジと変わってきて、羽の縞模様が濃くなります。個体差がありますが、オレンジの目の色になるまでに10年ほどかかります。
クマタカは、道路で車に轢かれた動物の死骸を食べることもあります。車を運転中に道路で轢かれた動物を見たときには、二重事故を防ぐために、道路から離れたところに移動するようにしています。
クマタカが生きていくためには、広大な深い森が必要です。森林伐採や、環境悪化、開発などで彼らの生息地はどんどん減っています。クマタカを守るために観察を続けていこうと思っています。
佐藤 圭 kei satou
1979年、北海道留萌市生まれ。動物写真家。SLASH写真事務所代表。フランスのアウトドアブランド「MILLET」のアドバイザー。
日本一の夕陽と称される留萌市黄金岬の夕陽を撮影するために写真家の道に入る。北海道道北の自然風景と野生動物を中心に撮影を続け、各地で写真展を開催し、企業や雑誌、新聞などに写真を提供している。
2018年、エゾナキウサギの写真「貯食に大忙し」で第35回『日本の自然』写真コンテスト(主催:朝日新聞社、全日本写真連盟、森林文化協会)で最優秀賞受賞。
ウェブサイト:https://www.keisato-wildlife.com/
Facebook:https://facebook.com/kei.sato.1612
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