幕張メッセの中に、多くの外国人が足を止める小さなブースがあった。花壇自動車大学校の展示ブース。初代セレナのC23型が、立派なスポコンカスタムに大変身。製作の裏側にある物語が、観客の心に、とてもよく響いていたぞ。
文/写真:佐々木 亘
■突然目の前に現れたセレナ‼よく見るとなんだか変なやつだった
カスタムのベースになったセレナは、決して学生たちが選んだクルマではない。
好きなクルマを好きにカスタムするのではなく、その場でその時に手に入るクルマに対して、アイディアを膨らませ、完成形へと持っていくのが花壇自動車大学校の授業スタイルである。
学生の目の前に登場したのは、C23型の初代セレナ。驚くことに純正のMT仕様だ。心臓部にはSR20(シルビアと同じエンジン)を積み込む。さらにFRというなんともレアなクルマだった。
そんなレアなクルマに、学生たちが描いた物語は、スポコンだったのである。
出展車の名前は「セレビア」だ。つまりセレナを、共通点の多いシルビアの方向へカスタムしていくということ。
SR20を積み込む代表的なクルマはシルビアであり、セレナがワイルドスピードのようなスポーツカーの多数出てくる映画に登場したら、
こんな感じかななどと想像しながら、製作は進んでいく。
■スピードの魂と再生への思いがクルマに宿る
フロントバンパーはシルビアのモノへ取り替えた。ワイドトレッドにするためオーバーフェンダーも自作する。
ローダウンカスタムはもちろんのこと、タイヤの切れ角を確保するためにタイヤハウス内も拡大した。車両の下半分だけを見れば、それはドリ車のシルビアそのものだ。ただボディ上部や内装に目を向けると、ミニバン・セレナの顔が見えてくる。
フルバケットシートは、あえて4脚だけ乗せた。リアシートの足元スペースは広大で、アルヴェルのエグゼクティブラウンジを想像させる。
とても快適に過ごせそうな車内なのだが、前方へ目を向けるとマニュアルトランスミッションのシフトノブが顔を出し、助手席シート下にはSR20が眠っているというミスマッチも面白い。
■今年のペイントテーマは再生と復活
さらに、毎年ボディペイントにも多彩な技術力を見せてくれる花壇自動車。
モチーフになったのはスカラベ。エアブラシで描かれた伸びやかなラインは、迫力と疾走感がある。塗装作業中には、マスキングをカッターで切り取る際に、塗り終わったボディ部分にまで刃を入れてしまうというミスもあったという。
何度も失敗しながら、今回の見事なペイントにこぎつけている。
右リアテールの上には、映画ワイルドスピードの俳優、ポール・ウォーカーに捧げる「For Paul」の文字も。
コンセプトの一つになったワイルドスピードへの愛も深い。
ワイルドスピードやシルビアをテーマに掲げたことは、多くの外国人来場者にも伝わり、ワイスピ好きの来場者から、多くの称賛を得ていた。
たまたま現れた1台のセレナが、このような形で生まれ変わり、日本以外の人から多くの支持を得たのは素晴らしい結果だ。学生たちの強い思いは結実する。
製作した学生に話を聞くと、タイムオーバーで未完成のまま出品することになり、悔しさも残るという。ただ、この未完成な状態の方が、よりスポコン感が強くなり、映画に登場しそうだなと思えたのも不思議なところだ。
懸命に取り組んだ学生たちへ、神様が与えた副産物とも言えるだろう。
自動車業界の未来を支える若者たちが、豊かな想像力を持ち、現場に出てくるのは嬉しい限り。
今後も自分の色を持ちながら、自動車をさらに楽しく、面白いものへと導いてほしい。
【画像ギャラリー】FRでSR20″縦置き”は熱すぎる!! クールな外観を画像でチェック!! (7枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方