近年自動車を取り囲んでいる話題は様々だが、色々なところで話題となるのが電動化だ。BEVはバッテリー性能の向上が課題とされているが、バッテリー性能向上に関することでよく耳にするキーワードが全固体電池ではないだろうか? 全固体電池が凄いことは分かると思うが何が凄いのか? 今回は全固体電池に関して簡単に紹介していく。
文:西川昇吾╱写真:ベストカー編集部、日産自動車
◼︎現在の主流となっているリチウムイオン電池の中身は液体ってホント!?
まずは簡単に現在電気自動車に主流で採用されているのはリチウムイオン電池を振り返ってみよう。
自動車のバッテリーに使用されているのは充電可能な二次電池と呼ばれるもの。二次電池では正極と負極に特性の違う素材を使用していて、この電極の間に電解質と呼ばれるものが配置されていて、電解質の間には活物質同士の直接接触を防ぎつつリチウムイオンを通すセパレータが置かれている。
基本的にこの電解質は現状多くが液体のものだ。電極の間で電子のやり取りをするときにリチウムイオンが移動する電池のことをリチウムイオン電池と呼ぶ。
充電時は正極側に充電電流が流れて、正極側あるリチウムイオンが電解質を通って負極側に移動する。正極と負極の間に生じた電位差で電池が充電されるのだ。
使用する時は負極側に放電電流が流れる。負極側に蓄えられたリチウムイオンが正極に向かって移動することでエネルギーが使われる。
簡単にまとめると液体の電解質にあるリチウムイオンが負極側に移動したり正極側に移動したりすることで、電力が貯まったり使われたりしているのだ。
◼︎全固体電池と現在のリチウムイオン電池の違いは??
全固体電池は先に紹介した電解質が個体となっているもの。リチウムイオンが動いて電力を使ったり貯めたりしているのは基本的には変わりない。
全固体電池が可能となったのは2011年に液体電解質を上回るイオン伝導率の固体電解質が発見されたのが大きい。固体電解質は科学的に安定しているため、想定外の副反応が発生しづらく、材料の劣化もしにくい、電解質が漏れ出す心配もない。
電解質が固体となっていて電解質そのものがセパレータの役割を果たすため正極と負極が物理的に接することもないため高い温度での動作も可能だ。
これらの特徴がもたらすメリットは大きい。電気自動車で言えば今まで以上に小さくても大容量のバッテリーが作れる(エネルギー密度を高く出来る)ため航続距離を伸ばすことが出来る。また形状に自由度が出るため車内空間が広く取りやすくなる。
伝導率が上がって、熱耐久性が向上するため充電時間を短縮したり充電回数を増やしたりすることも可能だ。そして固体なので環境変化に強く寿命が長い。
まさに電気自動車に携わるすべての自動車メーカーが欲する技術、それが全固体電池なのだ。
◼︎難しい面はあるの??
でもまだ実用化されていないということはそれだけ課題もあるということだ。
液体の電解質はイオンの移動が容易であるが、電解質を固体にする場合イオンが移動しやすい状態にするために、固体電解質内部を緻密化するプレス加工を行ったり、電極と固体電解質の密着性を良好にする加工や素材の選定を行う必要がある。端的に言えばまだまだコストがかかる状態であるのだ。
また素材の選定や加工方法という面では、これまで開発・製造してきた液体のリチウムイオン電池と異なり、ここ10年程度で急速に開発が活発になった分野なだけに、まだまだ未知数な部分が多く製品化に至るまでのノウハウや蓄積されていないという面も大きいだろう。
どの自動車メーカー、ひいてはどの電池メーカーが自動車用の全固体電池をモノにするのか。いま世界中で競争が起きていると言える。
最初に全固体電池を自動車用に実用化すれば一気にリードすることが出来るし、株価もグンと上がることだろう。世界中が血眼になっている技術なのだ。
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