昭和世代の旧車を見ていると、ステアリングの脇に謎のレバーがあることに気付く。四角の中に人工衛星のような斜め線が描かれているのだが、このレバー、当時のクルマにはなくてはならない重要な装置だったのよ。いったいこのレバーの正体は、何?
文:ベストカーWeb編集部/写真:日産自動車、写真AC
【画像ギャラリー】昭和風味満載のローレルとスカイラインのインパネを見て!(4枚)画像ギャラリー首を絞めてガソリンを濃くする!? チョークレバーの意外な仕組み
いきなり正解を言うと、このレバーはチョークという。チョークとは「(首を絞めて)息を苦しくする」という意味だが、文字通り吸気管の空気を絞り、混合気のガソリンを濃くすることをさす。
ガソリンエンジンはガソリンと空気を混ぜた混合気を爆発させて動くが、燃料が薄すぎると爆発しにくい。そこで、あえて空気の通り道を塞いで「息苦しく」させ、相対的にガソリンの割合を増やすのがこのレバーの役割なのだ。
当時は、コンピューターが燃料の量を勝手に計算してくれる装置などはなかった。すべてはアナログなキャブレター(気化器)が燃料を供給しており、その微調整を司るのがドライバーの手元にあるチョークレバーだった。
このレバーを引く加減一つでエンジンの目覚めが決まるため、クルマごとに異なる「引き癖」を把握することが、当時のオーナーにとっての第一歩だったのである。
冬の朝の格闘と職人技! 愛車をなだめすかす儀式の思い出
特にチョークレバーが活躍したのは、寒い冬の朝。このレバーで混合気をリッチ(ガソリン濃いめ)にしなければ、キャブレター車は機嫌が悪くてエンジンがかからなかったのだ。
しばらくブワーッと暖気してエンジンが温まったら、今度はレバーは戻す。戻さないで走り出すとエンジンがかぶってしまい、これまたぎくしゃくして大変だった。中には「セルをひねる瞬間はチョークを引いちゃダメ。エンジンが回り始めた(=クランキング)瞬間にチョークを引いて、燃焼具合で調整する」などという、職人級並みの技を求めるデリケートなクルマもあった。
その後、キャブレターは燃焼噴射装置に置き換えられ、さらに電子化が進んでいまやボタン一つでエンジンがかかる時代。今のクルマはどんなに寒くても一発で始動するが、かつてはドライバーが愛車の震えを感じ取り、耳を澄ませてレバーを戻すタイミングを計っていた。
不便ではあったが、そこには機械との確かな対話があった。クルマ好きにはぜひとも、チョークレバーに潜んだ苦闘の歴史を覚えておいてほしい!
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