軽自動車は最大サイズが規格で決められている。最近は広い室内空間と利便性の高いスライドドアを持つ軽スーパーハイトワゴンが人気だが、このクルマたちは厳しい制約の中で、可能な限り広い室内空間を確保しようと努力して開発されている。そんな中、驚かされるのがホンダの軽自動車たちだ。軽自動車随一の長いホイールベースを持っているからだ。このホイールベースの秘密はどこにあるのだろうか?
文:西川昇吾╱写真:ベストカー編集部、ホンダ
■他とホイールベースを比べてみると!?
実際、ホンダの軽自動車のホイールベースは長いのか?そう疑問に感じる人もいることだろう。昨年フルモデルチェンジされたN-BOXを始め、現行で販売されているホンダの軽自動車のホイールベースは2520㎜となっている。
これは2024年2月現在で販売されている軽自動車の中では最も長いホイールベースで、次に長いのがデリカミニなどの三菱&日産系の軽自動車で、2495㎜だ。
軽自動車のボディサイズは規格で決められていて、全長3.4m、全幅1.48m、全高2.0m以下と定められている。そのためホイールベースを大きく取ろうにも難しいという問題がある。それなのになぜホンダはココまで長いホイールベースを確保したのだろうか?
■ホンダ独自のM・M思想に基づいて開発
ホンダはM・M思想という哲学を掲げてクルマ造りをしている。これはマン・マキシマム/メカ・ミニマムの略で、「人のためのスペースは最大に、メカニズムのためのスペースは最小に」というものだ。この哲学を基に可能な限り室内空間を広くする工夫がホンダの軽自動車には施されている。
全長と全幅が限られている中で室内空間を確保するにはホイールベースを長くするのが最も有効的な手段だ。メカニズム部分を最小限にして室内長を最大にするためにホイールベースを長くするのだ。
ただ、ホンダ的には前後のタイヤをボディの四隅にどこまで寄せられるかという考えのもと、開発を進めた結果ホイールベースが長くなったというのが正しいようだ。
その内容はパッケージやレイアウトの見直しだ。エンジンルームの前後空間を短縮して、エンジンとミッションの上下方向配置を実施することで前後長を短くし、限界までパワートレインを前側に搭載した。
そしてセンタータンクレイアウトを採用することで、後席足元の凸形状を廃止してフロントとリアのタンデムディスタンスの確保と室内空間の拡大を実施している。
■室内空間以外にもメリットが!!
また、ホイールベースを長く取ることは室内空間を確保する以外にもメリットがある。それは直進安定性が向上することだ。N-BOXを始めとした人気の軽スーパーハイトワゴンは、車幅の割に全高が高いため直進安定性の確保が難しい。
しかし、ホンダの軽自動車はホイールベースが長いため他の軽自動車に比べて直進安定性的に有利なのだ。この直進安定性の高さが、ライバルたちに比べて走りが良いと言われる理由に繋がっていると言える。
軽自動車は普通車に比べてサイズが厳密に決められている。いわばレギュレーションの厳しい車種カテゴリーと言える。その中で求める性能を最大限実現するために、様々な創意工夫が必要となってくるのだ。
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