個人間カーシェアサービス「Anyca(エニカ)」が2024年中にサービス終了となります。91万人を超える会員が利用していたというエニカですが、当初想定した規模には遠く及ばず、サービス終了を決定したそうです。エニカ以外も苦戦をしている個人間カーシェア。はたしてカーシェアはどうなっていくのでしょうか。
文:吉川賢一/アイキャッチ画像:Adobe Stock_Eva March/写真:Adobe Stock、写真AC、NISSAN、HYUNDAI
【画像ギャラリー】Anyca Official シェアカーだった、ヒョンデ「IONIQ 5」(13枚)画像ギャラリー借りたい人は多い一方で、貸したい人はそれほど多くなかった
「乗ってみたいに出会えるカーシェアアプリ」として、2015年9月にサービスが始まったエニカ。借りる側は乗ってみたかった憧れのクルマに乗ることができ、貸す側はクルマをシェアすることで維持費を軽減することができる、エニカはその借りる側と貸す側のマッチングサービスでした。
「利用と所有の垣根をなくし、人とクルマの新しい繋がりを創る」としていたエニカですが、借りる側にとってはメリットが大きいものの、クルマを貸す側にとっては、いくら維持費軽減の効果があるとはいえ、愛着ある愛車を貸すということに抵抗がある人が少なくなかったのでしょう。冒頭で触れたように、当初想定した規模には及ばなかったとして、エニカは2024年中にサービス終了となることが発表されました。2024年11月初旬時点、すでに新規会員登録は終了となっています。
エニカのような個人間カーシェアサービスについては、2009年からサービスを提供していたCaFoRe(カフォレ)や、中古車大手のガリバーが運営していたGO2GOもサービス停止状態にあり、NTTドコモが運営していたdカーシェアも個人間カーシェアサービスの「マイカーシェア」が、2021年8月末をもってサービス終了となっています。
タイムズなどのカーシェアでもトラブルは多い
カーシェアについては、個人間カーシェアだけでなく、タイムズカーなどの企業が提供するサービスにおいても、前の利用者のごみが車内に残っていたりなどのトラブルは少なくないようす。ボディなどに傷をつけられるほどの被害はなくても、ガラスにべたべたと指紋がついていたりしても、クルマを大切にしているオーナーならば不快に思うでしょう。(禁煙なのに)車内でたばこを吸われてしまった、などは問題外。乱暴な運転でクルマを痛めつけれるのも、クルマ好きからすればたまったもんではありません。
自分のクルマではないのならしょうがないかと思えるものも、愛車でそうした状況になってしまう恐れがあるとなると、やはり貸したい思う人は多くはないのでしょう。自分が使っていない時間にクルマに働いてもらうという発想は斬新でしたが、やはり「所有」と「利用」の垣根は、簡単には超えることができなかったようです。
「憧れのクルマに乗りたい」というニーズには、個人間カーシェアでなくても応えられるはず
もちろんエニカにも、保険が付帯されていたり、トラブルに対応できる仕組みはあったようですが、オーナーのクルマに対する愛着に対して、完全には寄り添えていなかったのでしょう。
ただし、国内最大規模を誇るタイムズカーをはじめ、カーシェア自体は、今まさに急速に普及しており、公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団による2024年3月の調査結果では、国内のカーシェアリングのデポジット数(ステーションの数)は、前年比で17.6%増(2万6797箇所)、貸渡車両数は同19.6%増(6万7199車両)、会員数も同50.0%増(469万5761人)にもなったそう。
個人間カーシェアについても、キャンピングカーのシェアリングサービスCarstay(カーステイ)はサービス提供を続けており、2024年10月には、大人1人以上が宿泊できるテントの貸出しが可能なことを条件に、キャンピングカー以外のクルマも登録ができるようサービスを拡大しています。単純に憧れのクルマに乗るというニーズではなく、キャンプに行くためのクルマを借りるという、目的が明確になっていることで、利用会員のマナー意識が高く、トラブルが少ないのかもしれません。
借りる側の「憧れのクルマに乗りたい」というニーズには、個人間カーシェアでなくても応えられるはず。今後はそうした方向でカーシェアが進んでいくのではないでしょうか。
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