2014年3月をもってホンダ インサイトの生産終了が決定された。2009年2月にデビューした2代目は、打倒プリウスを狙いながらも、同年5月に登場した3代目プリウスの返り討ちに遭い惨敗……。しかしその心意気は高く買いたい! その軌跡を振り返る!!(本稿は「ベストカー」2014年3月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:編集部
2009年2月、満を持して投入された2代目インサイト
ホンダインサイトの生産終了が決定した。『インサイト』という車名、2度目の消滅となる。
2代目インサイトは、ある意味不運なクルマだったといえよう。
デビューは2009年2月5日。当時の福井威夫社長は、満を持して投入したとインサイトへの意気込みを発表会場で我々に伝えた。
いうまでもなく、当時は2代目プリウスが大ヒットを飛ばし、「ハイブリッドにあらずばクルマにあらず」と言うとちょっと大げさだけれど、そのくらいの勢いでプリウスが売れていた。
ホンダにはシビックハイブリッドはあったものの、すでに時代遅れ感が漂っていて販売的には大苦戦。価格的にも200万円を切る、10.15モード燃費で30.0km/Lクラスのハイブリッド専用車の投入が急務だったのだ。
ちなみに当時のシビックハイブリッドの価格は228万9000~285万6000円。当時の2代目プリウスの価格は226万8000~325万5000円だったので、けっして高すぎたわけではないけれど、やっぱり完成度の高いプリウスを前にすると、コストパフォーマンスで見劣りしたのはまぎれもない事実だった。
そこに登場したインサイトは、ボトム価格を189万円、売れ筋の中間グレードを205万円に設定し、10.15モード燃費=30.0km/L(JC08モード=26.0km/L)。
プリウスの10.15モード=35.5km/L(JC08モード=29.6km/L)にはかなわないものの、価格帯を35万~40万円安く設定したことで「買い得感」をアピールした。
これはプリウス陣営に大きな衝撃を与えたことは明らかだ。いや、逆にその『衝撃』が後のインサイトの「茨の人生」を誘うこととなるのだが……。

3代目プリウスがインサイトに放った強すぎる一撃
上の表を見ていただきたいのだが、インサイトの販売台数は2009年2月=4906台、3月=4088台、4月=1万481台と好調な立ち上がり。
ところがトヨタは大いに揺さぶりをかけてくる。現行型3代目プリウスのデビューは2009年5月なのだが、それに先立つ3月頃から「プロトタイプ」の情報を小出しにしたり、先行試乗会を開催してインサイトを牽制。
実はこの2009年4月にエコカー減税が開始され、ハイブリッド車は自動車取得税と重量税の免税が開始しているのだ。インサイトはこれに先立って登場したが、3代目プリウスはエコカー減税のスタートを見届けてからデビューした。インサイトの出方を虎視眈々と伺っていたと言ってもいいかもしれない。
そして5月18日に3代目プリウスが登場する。直前まで、「価格は2代目とほぼ同程度」と誰もが予測していたが、フタを開ければ最廉価のL=205万円、中間のS=220万円、上級のG=245万円というバーゲンプライス!!
さらに10.15モード燃費は38.0km/Lと2代目を上回るのだから、これはもう、インサイトは真っ青。さらに2代目を「プリウスEX」として189万円で併売するという荒ワザも展開。
数字は冷酷に現実を映し出す。2009年6月の販売台数を見るとインサイト=8782台に対しプリウス=2万1190台。以降は左上の折れ線グラフを見ていただくのがいいだろう。アッというまに販売台数の差を付けられてしまう。
もちろんインサイトが『ダメ』なクルマだったわけではない。逆に『いい』クルマだったからこそ、トヨタが「このままではウチがやられる」と3代目プリウスの販売戦略を超本気モードにして対処した、ということ。
トヨタはその時点までにTHSIIの原価を充分に回収していたため、3代目プリウスの価格を大幅に引き下げることができた、という事情もある。いずれにせよ、インサイトは強敵プリウスを本気にさせてしまったのだ。
インサイトだってただ無策でプリウスの返り討ちに耐えたのではない。2010年10月には、デビュー時より指摘されていた操安性を改善する一部改良を実施。
さらに2011年10月には大規模なマイチェンを実施して静粛性を向上させたり、さらに足回りを熟成させて乗り心地と操安性を引き上げるなど、商品力の向上には力を注いだ。
「プリウスに負けないためにはホンダらしいスポーティな走りと、上質な内外装で違いをアピールする」との意気込みでマイチェンを実施したという。動力性能をプラスする1.5Lの「エクスクルーシブ」もこのマイチェン時に追加した。
しかし、月間販売台数は3ケタが続く日々。同時期のプリウスは相変わらず2万台ペースで「勝負あった」感が漂う。泣くなインサイトよ、お前は頑張ったぞ!!
コメント
コメントの使い方最近、中古購入して乗ってみましたが、なるほど売れなくなったのが分かる。スタイルは良いのに全体に作りが安っぽい、ボディ剛性感が低い、シートが硬い、乗り味が硬い、燃費が最近の軽自動車に負ける。けど、スロコン、シート改造、タイヤ変更、サス変更で面白い車になりました。
燃費戦争を仕掛け、燃費の良さを日本での車選びの指標にまで押し上げたけど、その燃費で負けたせいで消えた。
燃費稼ぐために車内狭く、タイヤもエコで幅狭でグリップせず、価格競争のため内装もチープ。見た目は良い車だったのだから、もっとスペシャリティ感へ振っていたら面白かったのに。
実際、そこがマトモなCR-Zは今での純内燃に燃費で負けるし走りも鈍いのに、今でも多くのファンがついてる