2025年1月の東京オートサロンに出展され注目を集めていたヒョンデの新型SUV「インスター」。ポップなデザインが魅力のこのインスター、実は韓国の軽自動車がベースとなっている。……ん? 韓国にも「軽自動車」があるの!?
※本稿は2025年2月のものです
文:小林敦志/写真:ヒョンデ、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2025年3月10日号
韓国の軽自動車!? 軽車(キョンチャ)ってナンだ?
ヒョンデは東京オートサロン2025において、クロスオーバーSUVタイプの新型BEV「インスター」を日本デビューさせた。
そのサイズは全長3830×全幅1610×全高1615mmと、特に全幅は日本の5ナンバー車で一般的な1695mmよりも極端に狭いのが特徴だ。
実はこのクルマ、日本をはじめ海外市場ではインスターの名で展開しているが、韓国国内では「キャスパー・エレクトリック」と名乗っている。
インスターは派生車種で、ベースとなる「キャスパー」は“韓国版軽自動車”の「キョンチャ(軽車)」というカテゴリーのモデルなのだ。
キョンチャの規格は排気量の区分で「超小型」と「一般型」の2種類があり、キャスパーはそのうち一般型に分類される。
一般型の規格は排気量1L以下、ボディサイズは全長3600×全幅1600×全高2000mm以下。キャスパーは全長3595×全幅1595×全高1605mm(ルーフレール含む)のサイズで、パワーユニットは998ccのNAとターボだ。
なお、インスターは全長と全幅がキャスパーより大きくなっており、キョンチャの規格を超えている。ちなみにキャスパー/インスターは、韓国・光州市が21%、ヒョンデが19%の株式を持つ企業で、ヒョンデグループ傘下外の光州グローバルモーターズが生産している。
【画像ギャラリー】あら!! カッコいいじゃないの!! 東京オートサロン2025で人気を集めたヒョンデ インスター(24枚)画像ギャラリー韓国でキョンチャブームの兆しが!?
キョンチャとして初めて登場したのは、1991年に大宇国民車(現:GMコリア)が発売した「ティコ」というクルマだ。
これは3代目スズキ アルトをベースとしたモデルで、アルトが660cc、全長3195×全幅1395×全高1400mmだったのに対し、ティコは800ccで全長3340×全幅1400×全高1395mmと、アルトよりひと回り大きかった。
ティコの後継車種として1998年にデビューした「マティス」は、日本でも正規輸入販売されていたことがある。筆者は当時マティスに試乗したことがあるが、日本の軽自動車よりひと回り大きいサイズのおかげで、安定感も増していたことを覚えている。
韓国で現在ラインナップされるキョンチャは、起亜自動車のモーニングとレイ、そしてキャスパーのみとなっている。モーニングはアルトやミライースのようなセダンタイプで、レイは全高こそわずかに低いがN-BOXのようなトールワゴンだ。ちなみにレイにはBEV版もある。
日本ほどではないものの、キョンチャには優遇措置が適用される。ところが大きくて見栄えのするクルマが好まれる韓国のお国柄もあってか、日本の軽と異なり“景気が悪くなるとキョンチャが目立つ”と長らく揶揄される存在だった。
しかしここ数年、韓国経済の低迷やガソリン価格の高値安定、そして新しい価値観を持つ若い世代の台頭を背景に、キョンチャが見直されつつある。2021年にヒョンデ久々の新型キョンチャとしてデビューしたキャスパーは、その勢いを加速させているのだ。
キャスパーの登場もあって、再び注目を集めているキョンチャ。そしてキャスパーのBEV版として世界に打って出るインスター。果たして彼らは、日本のコンパクトカーの新たなライバルとなるのか? 今後の展開に期待大だ!
●軽車(キョンチャ)の特徴
・全長3.6m×全幅1.6m×全高2m以下、排気量1000cc以下
・各種税金の減免、保険料や高速道路料金の割引が適用される
・韓国では長らく不人気だったが、近年再評価が進んでいる
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