世界で人気のカムリだけどナゼ日本で失敗した? 理由は日本特有の文化だった 

世界で人気のカムリだけどナゼ日本で失敗した? 理由は日本特有の文化だった 

 今から約20年前、ミニバン一色だった自動車市場に、セダンを復権させるべく投入されたクルマがあった。復権は結果的に失敗に終わるのだが、この失敗から日本と世界のクルマの基準の差が読み取れる。日本の主流は世界の主流ではない。これが分かると、セダン復活のカギが見えてくるかも。

文:佐々木 亘/写真:トヨタ、ベストカーWeb編集部

ミニバン全盛時代にセダン復権を目指した8代目カムリ。その人気は意外にも海外でついた
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ミニバン全盛時代にセダン復権を目指した8代目カムリ。その人気は意外にも海外でついた
ミニバン全盛時代にセダン復権を目指した8代目カムリ。その人気は意外にも海外でついた

 日本におけるクルマの「カタチ」は、流行り廃りが激しい。1990年代初頭までは、クルマと言えばセダンだったのだが、90年代後半になってミニバンが登場し、主役の座を一気に奪った。その後はSUVがミニバン人気を食ったもののミニバンの勢いは衰えず、現在はSUVとミニバンが、カタチの大勢を占めている。

 90年代後半から続くミニバンブームへ、風穴を開けるべく投入されたのが2006年にデビューした8代目カムリだ。

 同時期にウィンダムがフェードアウトした関係もあって、歴代カムリの中では最も高級感に振ったモデル。本革シート・HDDナビ・専用フロントグリルを備えた、G’ DIGNIS EDITIONは、カムリ史上最高ランクの出来栄えとも言える。

 ボリューム感のあるエクステリアデザインを、シャープなキャラクターラインが締め、カムリに一層の迫力を出した。室内はグレージュでまとめられており、ステアリング上部やコンソールアッパー、パワーウィンドゥスイッチ周辺に木目調パネルが奢られる。

 ボディサイズは全長4815mm×全幅1820mm×全高1470mmという堂々たるもの。特に全幅は、同年に姿を消したセルシオに迫るほどの数値である。

 「きっと、誰もが魅せられる。」と銘打ってスタートした8代目カムリだが、魅せられたのは海外の人々。日本人が、カムリに大きな魅力を感じることは無かったのだ。

カムリが合わせた世界基準とミニバンが合わせる日本基準

海外では日本未販売の11代目カムリが登場していることからその人気がうかがえる
海外では日本未販売の11代目カムリが登場していることからその人気がうかがえる

 日本のセダン復権をかけて登場したカムリだが、その願いは叶わず。失敗の原因は、カムリが日本の方向を向いていなかったことにあるだろう。

 世界から見ると、2000年以降の日本の自動車市場は異質だ。基本的に小さくて、そこそこ広くて、豪華な(に見える)クルマが売れるのが日本。国土や道路事情がそうさせるのだろうが、日本人は小さいクルマに広い室内空間を求める。

 対して海外は小さいクルマは狭くて結構、広い空間が欲しいならクルマもデカくしなきゃダメでしょ、くらいの意識を持っているのだ。クルマの幅を広げれば踏ん張る力が増えるし、長くすれば直進安定性が増していく。だから、(全高が)低くて(全幅が)広くて(全長が長いクルマが良いし、そういうクルマは高い評価を受けるのだ。

 日本のセダン需要を掘り起こそうとして投入されたカムリは、日本人にとっての良いクルマではなく、海外からの評価が高いクルマだった。ミニバンから回帰する大人を吸引するためのカムリは、そもそも日本の「良い」にはなれず、セダンの復権も夢物語に終わってしまう。

ミニバン・コンパクトSUVときたらスモールセダンを作ればいいのでは?

2024年までは日本でも10代目カムリが販売されていた
2024年までは日本でも10代目カムリが販売されていた

 北米や欧州では流行らない「ミニバン」や「コンパクトSUV」が、日本では主力商品だ。バンより小さいミニバン、SUVより小さいコンパクトSUVと、日本市場では通常よりも小さいものが、一世を風靡してきた。

 カムリやマークXは、フルサイズに近くなって消えていったし、現在のクラウンやLSもボディサイズが大きくなるにつれて、日本での人気は反比例して小さくなっている。今の日本市場で、本気のセダン復権を考えるなら通常よりも「小さいセダン」を作るほかない。

 全幅こそ3ナンバーだが、全長はかつての5ナンバーセダンよりも短くした、スモールセダンなるものを作れたら、小さいクルマ好きの日本人が少しはセダンの方向を向いてくれるはず。

 日本にとってのいいセダンは、世界基準とは違う。日本のセダンにこのまま海外基準を投入し続けたら、本当にセダンが日本から消えてしまうかも。セダンファンには、まだまだ厳しい時代が続きそうだ。

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