手頃なサイズで良心的価格のクルマづくりが得意な、親しみやすい「庶民派」メーカーのスズキ。しかし次世代へと繋がる最新技術をないがしろにしてはいない。むしろ他社が思いもつかない方法で次世代技術を活用していたりするのだ!?
※本稿は2025年4月のものです
文:佐藤耕一/写真:スズキ、SkyDrive ほか
初出:『ベストカー』2025年5月10日号
スズキが計画する「軽やかな挑戦」
スズキの社是に「小・少・軽・短・美」という行動理念がある。スズキの次世代技術は、単なる小型軽量化や低コスト化という枠を超えた、グローバルに通じる合理性と、その結果としての独自性を実現するものだ。
その軽やかな挑戦は、これからの10年、モビリティの本質を問うひとつの指標となるだろう。その次世代技術とはなにか、具体的に説明しよう。
軽量化戦略。目指すは「580kgのアルト」
スズキの軽量化戦略は、最も象徴的な「アルト」で現行比100kgの軽量化を目標とするものだ。
具体的には、冷間プレスの高強度化による鋼板の板厚削減、それに伴うNVH発生を抑え込む減衰接着剤の活用、ワイヤーハーネス集約による軽量化、内装トリムの発泡化など。この全社プロジェクトは2030年ごろの市販化を目指している。
スズキ流ハイブリッド、スーパーエネチャージ
従来のSエネチャージを48V化し、ベルト駆動ISGからギア駆動のP2型ハイブリッドに進化させた「スーパーエネチャージ」は、従来2kW程度のモーター出力を10kW程度まで強化し、エンジン出力の3割ほどにも達する。
48Vという標準規格を利用しつつ、小型車であればストロングハイブリッド並みの効果を得られるという。逆転の発想による低コストかつ合理的な設計だ。
コンパクトでリーズナブルな電動化
eビターラに続くスズキ独自企画の小型EVに搭載されるのが、自社開発のeアクスルだ。競合製品に対して最も小型軽量を実現し、衝突安全性の向上と車両全体の軽量化にも寄与するという。
PHEVに関しても小型エンジンを利用したレンジエクステンダーを想定。小さく・軽く・安く、という思想に沿った選択である。
SDVライト。スズキ独自のバランス型アーキテクチャー
SDVを実現するため、自動車業界はECUをドメインごとに統合、さらには中央CPUによるゾーン型アーキテクチャに向けて進んでいるが、根本的な革新にはコストがかかる。そこでスズキの「SDVライト」戦略は、部分的なECUの統合と分散型の共存を志向する。
例えば車内外の照明やドア・窓・ミラー・ワイパーなどを集中制御するボディドメインは、どの市場でも必要な機能なのでECUを統合するが、インド市場ではオプション扱いとなるマルチメディア関連のコックピットドメインは分散型のまま柔軟性を維持する、といったものだ。
次世代モビリティへの取り組み
乗用車にとどまらず、スズキはモビリティの未来にも目を配っている。
「所有から利用」の変化を見越した公共交通サービスや、スカイドライブ社との小型エアモビリティの協業、またスズキが得意とするセニアカーの要素技術を活用したタフな電動車台など、スズキらしい合理性を体現する次世代モビリティに積極的に投資をしている。



















コメント
コメントの使い方スズキは2輪のレースで軽量化(軽さは正義)に目覚めたんでしょうね。
スズキならやってくれるでしょう!
これも技術だな。
安全装備を載せて重量増を軽量化でカバーするのは中々出来ないこと。
実現目標までまだ先なのが残念ですが、軽量化へ特化していくのは安さにも繋がり歓迎です。
世界でみればホンダと競れるくらいに今超売れまくってるのがスズキですからね。
その稼ぎを開発に回すのは当然ですが、手法がいい。軽く作ればそれだけ原価も低くできる。
さらに軽ければ、コストや技術障壁の低い電動化でも、効果の比率を大きくできる。日産やダイハツもこっちで勝負掛けるべき