他社が製造した車両を仕入れ、自社ブランドのクルマとして販売するOEM車。エンブレムだけ違うものもあれば、顔つきがまったく違うモデルもあり、深掘りするとなかなか興味深い。今では多くのメーカーで扱うOEM車のなかから、ユニークなケースをいくつか紹介しよう。
文/木内一行、写真/スズキ、ダイハツ、トヨタ、CarsWp.com
【画像ギャラリー】OEM車の歴史は面白い!!(13枚)画像ギャラリー「3メーカーで兄弟だったOEM車たち」 スズキ・アルト/ダイハツ・ロッキー

軽自動車から大型サルーンまで、さまざまなOEM車があるが、なかにはひとつのモデルから複数のOEM車が生まれることもあった。
積極的にOEM車を供給しているスズキも、アルトを数社に供給していた。
ひとつはマツダで、1998年に5代目アルトのOEM車がキャロル(4代目)として発売された。キャロルといえば、マツダ5チャンネル体制時に投入された個性的なデザインの2代目が有名だが、アルトの兄弟車となったのは4代目からだった。
続く5代目は2004年に登場。
アルトのモデルチェンジから2週間ほど遅れて発売され、フロントグリルを専用品に交換し、マツダエンブレムを貼付。女性ユーザーをターゲットにリメイクされた。
その後もスズキとマツダの関係は続き、8代目となる現行モデルもアルトのOEM車としてラインナップ。マツダのベーシック軽として、重要なポジションを任されている。
もうひとつは日産だ。
6代目アルトの供給を受け、「ピノ」として2007年に発売。日産コンパクトカーの末っ子という位置付けだった。アルトとの違いはこちらも専用マスクで、この他に雪の結晶をイメージしたホイールキャップやサイコロ柄のシートデザインを採用し、差別化を図った。
ただ、アルトは2009年12月にモデルチェンジするものの、ピノはその翌月に販売終了。1世代、約3年という短命に終わった。
結果的にはキャロルとピノで明暗が分かれたが、6代目アルトが軽自動車で初めて3兄弟を形成したのだ。
3兄弟となると、最近ではダイハツ・ロッキー、トヨタ・ライズ、スバル・レックスもそう。
ロッキーとライズはダイハツとトヨタの共同開発車だが主導はダイハツで、同社の新しいクルマ作りのコンセプト「DNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」に基づいて開発。生産もダイハツの滋賀工場で行うため、ライズはOEM車扱いとなる。
ただ、エクステリアはフロントのデザインが異なり、ロッキーはヘキサゴングリルでSUVらしい力強さを表現するのに対し、ライズはトヨタ独自のキーンルックでシャープな表情を演出。ちなみに、パワートレインに両者の違いはない。
レックスに関しては完全なロッキーのOEM車。エクステリアの変更点もエンブレム程度だ。ただし、エンジンは1.2リッターのガソリンのみで、ターボやハイブリッドは未設定。駆動方式もFFのみとなる。
「複数投入でひとつの軍団を形成」 トヨタ・ピクシスシリーズ
グループ会社も含めると世界トップの販売台数を誇るトヨタだが、これまでに軽自動車を自社開発したことはない。
とはいえ、年々多様化するユーザーニーズに応えるには軽自動車が必要。そこで、開発コストを抑えるためにグループ会社のダイハツから軽自動車のOEM供給を受け、「ピクシス軍団」を作り上げた。
まず2011年9月に投入されたのが、ムーヴコンテをベースにしたピクシススペースだ。スクエアなセミトールスタイルで、標準仕様とエアロを装着するカスタムを設定。
後者にはターボエンジンも搭載された。ムーブコンテとの違いはエンブレムのみで、同グレードでも装備は少々異なる。ただ、トップバッターとして登場しながら、消滅したのも一番早かった。
続いてリリースされたのがピクシスエポック。これは燃費自慢のミライース(初代)がベースとなっており、ガソリン車トップレベルの燃費性能を達成しながら、79万5000円〜というプライスを実現。ミライースとはエンブレムで差別化された。
ちなみに、2017年にはベースがモデルチェンジした数日後にエポックも2代目に移行した。
2015年にはピクシスメガを投入。
前年に登場したウェイクがベースで、スーパーハイトワゴンならではの広大な室内空間が魅力。1455mmという室内高は、ミドルサイズミニバンを凌ぐほど。このメガも、他のピクシスシリーズ同様にエンブレムで差別化されている。
そして、キャストをベースにしたピクシスジョイが2016年にデビュー。
本家ではキャラクターの異なるアクティバ、スタイル、スポーツという3種を設定したが、ジョイではC(クロスオーバー)、F(ファッション)、S(スポーツ)と名前を変えてラインナップ。エンジンは、CとFは自然吸気とターボ、Sはターボのみだった。
また、乗用だけでなく商用車でもOEM車を供給。ハイゼットバン/トラックをベースにしたピクシスバン/トラックが2011年12月に登場。
こうしてトヨタのなかにピクシス軍団ができたわけだが、現在生き残っているのはエポックとバン/トラックの3種となっている。
ちなみに、マツダもフレア(同カスタムスタイル、クロスオーバー、ワゴン、タフスタイルなど)としてひとつの軍団を作り上げている。













コメント
コメントの使い方マツダのファミリアバンもありますね。
毛色が違うのであれば、日産アトラスも数奇な運命を辿っています。