【消えゆくエンジン技術】なぜ日本では、スーパーチャージャー車が少ないのか? 

 昨今、国内メーカーでもダウンサイジングターボが増え、高効率で低燃費のエンジンが主流となってきています。

 ターボ以外にもエンジンの過給システムといえばスーパーチャージャーがありますが、昨今国内で採用されている車種は、ごくわずか。

 同じ過給システムなのに、なぜスーパーチャージャー搭載のエンジンが少ないのでしょうか。

文:吉川賢一、写真: 池之平昌信、日産、マツダ、ベストカー編集部

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国産車に搭載されている現役のスーパーチャージャーエンジンは?

ノート

 現状国内で採用されている代表例としては、日産ノートが挙げられます。ノートの直列3気筒1.2リッターエンジン「HR12DDR」がスーパーチャージャーを搭載しています。

 回転数に関わらずオンオフが可能な電磁クラッチ付で、あくまで低燃費を目的にした「エコスーパーチャージャー」の位置づけです。

 また、マツダ3へ2019年12月に追加されたSKYACTIV-Xもスーパーチャージャーです。これによってガソリンの理論空燃比14.7:1から、30以上:1というリーンバーン燃焼を行ない、燃費を稼いでいます。

SKYACTIV-X

 他にも、HKSなどのアフターパーツメーカーからは、後付のスーパーチャージャーキットが販売されてはいますが、メーカー純正のスーパーチャージャーは非常に少ないのが現状です。

 ちなみに海外では、ボルボがターボ+スーパーチャージャー+PHVを搭載したV60 T6や、メルセデスベンツの直6ターボ+電動スーパーチャージャー+ISG+48Vを足したSクラス「S450」など、1000万円級の高級車にスーパーチャージャーが搭載されています。

スーパーチャージャーが嫌われる理由は「性能」ではない?

 ターボチャージャーは排気ガスを利用しているので、十分な過給圧を得るためにはある程度のエンジン回転数を上げていかないとなりません。

 対して、スーパーチャージャーは、クランクシャフトの回転力を分けてもらい駆動するため、低回転時でも過給ができます。

 アクセルを踏み込めばすぐに過給が始まるので、レスポンスが良い、というメリットもあります。出力特性もエンジン回転数にほぼ比例してスムーズです。

 ただしエンジンの力を分けてもらって駆動していますから、当然エンジンへの負荷は増大してロスが発生します。

 さらには、エンジンが高回転の時には、過給機の負荷が大きくなってしまうため、ターボチャージャーほどパワーを得ることはできないという特徴があります。

 そのためスーパーチャージャーは、先述したノートのように、エンジンが高回転になったときは、電磁クラッチで一時的にスーパーチャージャー機構をオフにするなど、機械的な対策をして、採用されてきました。

 しかしながら、どうしても取り除けないデメリットの一つが、ターボチャージャーと比べて本体サイズが大きく、重たくなってしまうという点です。

 昨今のエンジンルームは、エンジン補機類だけでなく、先進走行制御のセンサーや、衝突安全対策などで、エンジンルーム内に余裕がありません。

マツダ3 SKYACTIV-X搭載エンジンルーム

 特にコンパクトカーなどは「ギチギチ」の状態です。そうしたスペースに押し込める、コンパクトで高効率のスーパーチャージャーが必要となります。つまり、コストがかかるということです。

 また、もうひとつの理由が「ターボ技術の進化」です。ターボチャージャーは比較的、構造が簡単です。

 それに合わせて緻密な過給コントロールができる電子制御の進化により、ターボエンジンの弱点であったターボラグを少なくし、エンジンの効率が向上できるようになったことで、スーパーチャージャーでなくてもよくなってしまったということが挙げられます。

今後の過給機構はどういう方向に進化する?

 「超コンパクトで高効率の新型スーパーチャージャーの世代へ!」とは、残念ながらならないと考えています。

 なぜなら、マイルドハイブリッド技術があれば、スーパーチャージャーは実質、不要となるためです。

 燃料を消費する加速時に、あえてエンジンに負荷をかけてトルクを引っ張り出すようなことは、燃費が重要視される、昨今のクルマでは望まれません。

 いずれ、蓄えた電力を使って、発進時にトルクを付加する燃費効率のいいハイブリッド技術におき変わり、パワーを稼ぐ目的の過給は、衰退していくだろうと予想しています。

 スーパーチャージャーが生き残る道としては、レース等を目的とする「パワーアップ」用途や、発電用エンジンの効率アップなど、限られてしまうことになると考えています。

まとめ

 古い時代のスーパーチャージャーは、そのサウンドが「猫の鳴き声」とも揶揄されました。「ミャー」という高音は今聞いても心が躍る懐かしいサウンドです。

 静かで速いクルマが多くなってきた今、こうしたクセのあるクルマがどこか恋しくなるのは、筆者だけではないでしょう。

 残念ながら、今後は衰退していくと思われる「スーパーチャージャー技術」ですが、ハイブリッド技術が登場する前の、先人のエンジン技術者たちの創意工夫が織り込まれた素晴らしい技術のひとつであることは、間違いありません。

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