結局なんのこと?? 昨今囁かれるクルマ界の重要ワード「SDV」とは

電子プラットフォームが目指す究極の着地点とは?

ホンダが進める「ASIMO OS」も、いわゆる車載OSでSDVの領域。今後の自動運転時代を見据える
ホンダが進める「ASIMO OS」も、いわゆる車載OSでSDVの領域。今後の自動運転時代を見据える

 では、既存の大手自動車メーカーはどうやってキャッチアップすればいいのかだが、ヴァレオは段階を踏んでSDVに安全に着地できるような技術を提案している。

 これまで使われてきた分散型コンピューティングシステムは、効率はいまひとつながら一部分が壊れても他への影響が少ないという意味では信頼性の高い優れたシステム。既存の大手自動車メーカーはここを疎かにはできない。

 今回ヴァレオが提案したのは、ECUのメイン基盤を拡張可能にして、必要に応じて高性能なSOCや追加メモリーを追加できるシステム。分散コンピューティングからセントラルコンピューティングへ、スムーズに橋渡しをするためのアーキテクチャだ。

 ただし、コスト面から見るとこの種のCPU増設型は課題が多い。

 まず、分散している数多くのECUを減らせないと追加する高性能SOCのコストがそのまま増加コストとなる。最先端SOCの調達コストは100ドルを超える水準らしく、とてつもないコストアップ要因となる。

 さらに、計算能力の高いハイエンドSOCをそのまま自動車用として使うのは無理で、水冷化など動作環境を安定させる仕組みが不可欠。真夏の車内に置いたスマホが熱暴走した体験を持っている人は少なくないと思うが、自動車用半導体というのはケタ外れにタフな環境耐久性が求められるのだ。

SDVによって自動車メーカーが得るものとは?

自動運転と言っても、レベル2クラスが現実的だ。レベル4以上は限定した用途に限られよう
自動運転と言っても、レベル2クラスが現実的だ。レベル4以上は限定した用途に限られよう

 こうやってハードウェアとしてのコンピュータの性能が向上したとしても、その先に今度はソフトウェアのビジネスモデルという課題が立ち上がってくる。

 SDVの本質は車載電子プラットフォームの革新だけではなく、その上で動くソフトウェアでどうやって収益を上げるかが最大のテーマ。スマホの“サブスク”のように、ハードを売った後でも安定した収益を上げられるビジネスモデルが模索されている。

 しかし、誰が考えてもわかるように、スマホでできることをわざわざ自動車のコンピュータにやらせても意味はない。「映画が見れます、ゲームもできます!」みたいな宣伝をするBEVも見かけるが、そこにわざわざ課金するかというと甚だ疑問だ。

 では何がクルマのソフトウェアでキラーコンテンツになり得るかといえば、これはもう100%自動運転しかない。「SDV! SDV!」と大騒ぎしてはいるが、多くの関係者が最終的な着地点と考えているのはココだとボクは見る。

 それも、本命はロボタクシーのようなレベル3以上の完全自動運転ではなく、緊急時にドライバーの関与を必須条件とするレベル2が主戦場。レベル2にとどめることで自動車メーカー側のリスクを回避しつつ、テスラのFSDは月額99ドルで多くの人が利用している。

 単純計算で年間約1200ドルの収益があるなら、携帯電話みたいに5年縛りでクルマをタダで提供してもビジネスが成り立つ可能性も。

 つまりは、テスラのFSDや中国のNOAにどう追いつくか、これが業界を騒がせる“SDV”の本質といえるんじゃないでしょうか?

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