中国に次ぐアジア市場として注目を集めているベトナム。初のベトナム国産乗用車ブランドのビンファストの登場も話題だ。その熱さを体感しようとハノイショーの取材に向かったが、そこには目を疑うような光景が!?
※本稿は2025年7月のものです
文、写真:大音安弘
初出:『ベストカー』2025年8月10日号
ハノイショー取材でベトナムに上陸!
ベトナムの首都ハノイで開催される「ベトナムオートエキスポ」は、今回で18回目を迎える4輪車および2輪車を中心としたモーターショーである。
公式サイトによれば、500のブースがあり、3日間の開催日には、約5万人の来場者が見込まれるという。国内外の自動車メーカーも出展するようなので、ベトナムのクルマ事情を探るべく、羽田から約6時間をかけて現地に向かった。
到着地のノイバイ空港では、ベトナムの自動車メーカー「ビンファスト」のEVタクシーがゴロゴロ。さらに日本車の姿も多い。ホテルのある旧市街は、建物が密集しており、その狭い道を多くのバイクとクルマが駆け抜ける姿に、モータリゼーションの進展を感じる。
そんな風景に心を弾ませながら、会場となる国際展示場「ICEハノイ」に向かう。しかし、ワクワクはここまで……。驚きの現実に直面することになる。
500のブース!? 話がちが〜う
会場入り口正面には、三菱自動車がブースを構え、エクスフォースとパジェロスポーツが並ぶ。珍しい左ハンドル仕様に感激したのも束の間、なんと展示車は2台だけ。周囲のブースも小さく、とてもクルマなんて入らない。
しかも、会場は展示場としては小さな建屋ひとつだけ。500どころか、大小合わせて114のブースのみ。完成車メーカーなんて3社だけで、期待のビンファストもなし。
そのほかの展示は、少数の電動のバイクや輸送用カート、少量の自動車関連部品のみ。正直、いっぱい食わされたという気持ちになった。
最大の展示ブースを飾ったのは、ベトナムの自動車メーカーである「ビームモーター」で、ヒョンデと提携し、商用車を開発製造。小型トラックとバンを展示したが、ADASなど縁遠いシンプルなものばかり。
三菱以外の乗用車は、なんと中国「GACモーター」のみ。大型ミニバン「M8」、2024年に導入した中型ミニバン「M6プロ」、大型SUV「GS8」の3台だけのフルライン展示。すべてガソリン車だ。
ただショー会場で興味深い発見もあった。会場入り口前に設置されていた試乗コーナーで、エンブレムを隠した1台のセダンを見かけたのだが、これがまさかの日産 N7。しかも初日以降は、姿を消してしまった。
推測するに現地の日産販売店が、今後のベトナム導入を見据え、テスト的に持ち込んだものだったのだろう。これが唯一の大発見となった。
ベトナムのモーターショーの未来は?
なぜベトナムオートエキスポは、ここまで寂しかったのだろうか。ショーの名誉のために付け加えれば、会場自体も半分ほどになり、より規模は縮小された様子。
経済成長を続けるベトナムの新車販売の現状だが、2019年以降は40万台規模を維持し、2022年50万台まで成長をみせたが、景気悪化で2023年は再び40万台まで減少。
2024年は、政府の支援措置や販促の成果で、49万台まで回復を見せており、2025年の上半期の数字も悪くなく、モーターショーのニーズは高そうに思える。
ただベトナム最大の都市ホーチミンでは、「ベトナムモーターショー」が存在し、2年振りの開催となった2024年の来場者数は24万人だったというというから、歴然たる規模の差がある。
コロナ明けで、2024年に5年ぶりに復活したベトナムオートエキスポだが、会場の出展社にも勢いはなく、お付き合いという雰囲気。開催者は、出展社と来場者の集客に失敗しており、これで見納めかもしれない。













コメント
コメントの使い方