安全運転に欠かすことができないワイパー。フロントウィンドウに必ず装備されているヤツだが、昔からその仕組みは大きく変わっていない。電子化・効率化が進むクルマの中で、唯一と言っていいほど昔からの姿かたちが変わらないワイパー。彼らの進化は、もう止まってしまっているのだろうか。
文:佐々木 亘/画像:ホンダ・Adobe Stock(メイン画像=Frame Fusion)
【画像ギャラリー】対向式や1本ワイパーを積極採用!! ちょっと変わったワイパーを使うホンダ車を一気見(26枚)画像ギャラリーワイパーの歴史は古くて深い
ワイパーが発明されたのは1903年のこと。メアリー・アンダーソンが発明し、特許を取得した。ガソリン自動車の誕生が1895年頃、量産が1900年頃からスタートしているから、クルマとワイパーはほぼ同じ時期に誕生し、長い年月を共に歩いてきた。
手動式ワイパーは1908年にドイツで誕生し、その後1926年には世界で始めてボッシュが電動モーターによるワイパーシステムを誕生させる。そして、ほぼ現在のワイパーのカタチに近い、曲面フロントガラス用枢軸式ワイパーブレードが誕生したのは、1958年のことだ。
翌年にはウィンドウウォッシャーが登場し、1975年には後方視界を確保するリアワイパーが登場してくる。ここまでで、ワイパーとしてはほぼ完成形。今でも我々は、雨の日になるとこうして発明されたワイパーに視界を確保してもらい降雨状態でも安全なドライビングを行うことができるのだ。
ワイパーを支える土台のワイパーアーム
ワイパーは大きく分けて2つの部品から成り立っている。ワイパーの土台となるワイパーアームと実際に水を掃くゴム部品のワイパーブレードだ。
まずは土台部分のワイパーアームの進化から見ていこう。形状や動作は大きく変わらないものの、ワイパーアームは進化をしていないわけではない。耐久性はもちろん、最近多い曲面のガラスにもフィットするような形状や圧力を維持したり、動作時に音が出ないようにしたりといった工夫がみられるのだ。
自動車のフロントガラスには、水滴以外にも砂や虫、雪や氷などいろいろな物が付着する。これらを物理的に擦り落とすのがワイパーの役目だ。ワイパーがフロントガラスの汚れを擦り落とす時にはかなり強い力をかけていて、それは一般的なクルマのタイヤの単位面積当たりの圧力の4倍にものぼる。こうした強い力を出すために、日夜ワイパーを支えているのがワイパーアームなのだ。
そしてワイパーのアームは高性能化していく。1986年にはスポイラーワイパーが登場し、的確なダウンフォースで払拭性能を向上させた。さらに最近ではクルマの空気抵抗を小さくするために、ワイパーアームの形状にも様々な工夫が凝らされている。アーム部分にカバーを付けたり、アーム自体を空気抵抗の少ないモノ(エアロワイパー)へ変えたりしながら、クルマと一緒に進歩を続けているのだ。
ゴムの進化もマジで凄いぞ
また、ワイパーの本丸とも言えるブレード部分でも、進化の勢いは止まらない。
1種類のゴムで構成されていたワイパーブレードは、1994年にボッシュ・ツインゴムの登場で、大きく進化する。ガラス面との接地面用には硬いゴムを採用し、ベース用には柔軟性のゴムを採用したのだ。これにより、より払拭性能は向上しながら、ブレード部分の耐久性が上がった。
ブレードの耐久性は、物理的な強さ以外にも、様々な方向で要求される。汚れや水を吹くために柔軟性を求められる一方で、繰り返しの摩擦や強い圧力に耐えうる耐久性、紫外線などへの耐性に、日本のどの地域でも年間を通して屋外の気温変化に耐えきれる耐熱性、ウォッシャー液のアルコールや界面活性剤への耐性も問われる。
これらを高次元でバランスさせ、今もなお、美しく静粛に高耐久で使用できるゴムへと改良を続けているのである。ゴムの研究に終わりはない。
姿かたちや仕組みは大きく変わらないが、細部の進化は自動車部品随一とも言えるワイパー。これからも私たちが気づかぬところで、ワイパーの高性能化は続いていくだろう。





























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