「危ない!!!!」 運転中にキケンが降りかかる時、ドライバーはどうすればよいか!? プロのドライバーが教える緊急回避のイロハ!

いざという時のため車間・車線・周囲の状況などを頭の中に!

前後左右すべてに「余裕」を持たせるのが望ましい
前後左右すべてに「余裕」を持たせるのが望ましい

 この「逃げ道の確保」は、車線位置取りにも表れる。例えば二車線道路で常に他車と横並びになって並走していると、いざという時に左右どちらにも回避できなくなる。理想は、隣の車両に対して前後いずれかに半車身以上の余裕を持たせ、どちらか一方に車線変更できるスペースを確保しておくことだ。

 プロドライバーが「互い違いに走る」と表現するように、周囲車両との位置関係を常に動的に管理しておくことで障害物出現時に回避方向を即座に選択できることに繋がる。

 回避動作におけるステアリング操作では急激な入力に陥る。その際にも速くて滑らかな舵角操作が求められる。ABSが介入していても、ステアリング操作を適切に行えなければ、結果的に制動距離が延び衝突回避回避もできないことがある。

危険予測を身体化させる訓練

「背中にも目をつける」という言葉があるように、プロドライバーは周囲の状況や未来予測を無意識レベルでできるようにしている
「背中にも目をつける」という言葉があるように、プロドライバーは周囲の状況や未来予測を無意識レベルでできるようにしている

 このため、回避と制動の優先順位を瞬時に判断する訓練が必要なのである。

 目先の障害物を避けられたとしても、その先にある二次障害物も想定し、回避行動の後に完全停止するまでをトレーニングする必要があるわけだ。

 ステアリングを切る方向、たとえば右に避けた先に対向車がいる場合、それは二次的な衝突を招く危険がある。左側が崖であったり歩行者が存在する歩道だとしたら、むしろブレーキを維持しつつ衝突エネルギーを最小化する方が被害を最小化できる場合もある。

 最善の回避方向を選ぶには、普段から「周囲の情報を更新し続ける意識」を持つことが前提となる。プロドライバーは、前方だけでなくミラーで後方や側方の状況も常に把握しており、危険が発生した際にどの方向に逃げられるかを周辺環境と合わせて無意識に演算している。

 これこそが、「速度を出さない」理由でもある。車速が上がれば上がるほど、視野は狭まり、判断時間は短くなる。高速走行中は視覚情報の更新頻度を維持できず、結果的に回避余地を自ら奪うことになる。

クルマと運転への理解・知識も必要になってくる

クルマが滑るとはどういうことか、どうすればいいか。技術と知識は不可分の関係だ
クルマが滑るとはどういうことか、どうすればいいか。技術と知識は不可分の関係だ

 低ミュー路(摩擦係数の低い路面)では、さらに慎重な操作が求められる。雨天や積雪時には、ブレーキやステア操作によって発生した慣性が車体のヨー方向の動きを誘発し、姿勢を乱す危険がある。

 急ハンドルで回避した際、タイヤが一瞬グリップを取り戻した後に反対方向へ揺れ返す現象をヨーダンピング(おつりを食うと表現されることもある)と呼ぶが、これは熟練したドライバーでなければ収束が難しい。

 こうした挙動を防ぐには、ステアリングの入力を滑らかに保ち、タイヤに過剰な横負荷を与えないことが基本だ。横方向の移動を最小限に抑え、できる限り直線的に減速して停止することが車速を落とし安全に直結する。

 緊急回避において「ブレーキを踏む」「ハンドルを切る」といった動作は独立しているように見えるが、実際には車両の物理的限界の中でトレードオフの関係にある。制動と操舵を同時に最大化することはできないため、どちらを優先すべきかを瞬時に判断する力が不可欠なのである。

理想はやっぱりプログラムの存在!

メーカーなどが主催する企画やプログラムに参加して引き出しを増やしておくのが安全運転につながる
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 最終的に、緊急回避の成否は「予測準備意識」と「適切な操作」によって決まる。突然の事態に対して、身体が自然に反応できるよう、トレーニングプログラムを受講して急制動や障害物回避の練習をしておくことが望ましい。

 トレーニングの目的は、単にブレーキ操作を磨くことではなく、自動車の挙動特性を理解し、どのような速度・路面・荷重条件でどの程度の制動力が得られるかを体感することにある。これを知らずに走ることは、操縦する機械の限界を知らぬまま走行するのと同義であり、危険だ。

 現代の自動車は高度な電子制御を備えているが、最後に安全を確保するのはあくまで人間の判断で、自動運転が完全に担保できない領域があるのだ。緊急回避とは反射的なテクニックではなく、常に「最悪を想定した準備の総合結果」と言える。

 前方・後方・側方・周辺の空間を意識し、速度を抑え、回避の余地を常に残す。緊急回避を予防する運転こそが、日常の中で誰にでもできる最も確実な緊急回避術である。

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