マスタードライバーにプライドを持っている
豊田章男会長は2025年の6月、6年ぶりにニュルブルクリンク24時間レースをGRヤリスDATで走った。
そこで市販車と同じ吊るしのエンジンで走り切れるのはGRヤリスとポルシェだけだと称賛されたことがうれしかった。20年前の悔しさが少しだけ晴れた気がしたという。
成瀬さんが生前「マスタードライバーはオーナーシェフのようなものだ」と言っていたことを思い出し、トヨタというレストランの「味付け」が評価されたと受け止めることができたからだ。
トヨタのスポーツカーづくりに欠かせない秘伝のタレとはどんなものなのか? という質問には、
「マスタードライバーがオーナーシェフなら秘伝のタレがあってしかるべき。でも、それはこれだというレシピがあるわけではなく、見よう見まねで盗むべき技や所作に近いものなんだと思います。
レシピもない、私のレクチャーもない、ただ、こちらがいなくなった時にトヨタの味はこれなんだというもの、それが秘伝のタレなんだと思います。
トヨタらしさを守るという意味でマスタードライバーという肩書にはプライドを持っています。会長という肩書よりも私にとってはずっと大事なものなんです」。
気になる豊田章男会長の次のマスタードライバーに話を向けると、豊田章男会長は笑みを浮かべながらこう答えてくれた。
「私の後任のマスタードライバーですか? 誰かひとりの“スーパーマン”が生まれ、今すぐできるかというと、それは無理です。
だったら何人かでチームを作り、1+1+1+1を4ではなく、5とか6にすればいいんです。チームワークで進めるのがいいと思います。
私が社長をやりながらマスタードライバーを務めることになった当時は反対する人ばかりで、どうやって戦っていけばいいのか? という状況でした。でも今は違うんです。確実に仲間が増えました。
私は『しんがり役』として過去に引き戻そうとする“亡霊”たちから仲間たちを守るために戦っていく決意です」
秘伝のタレを未来に残していくために豊田章男会長はまだまだ走り続けていく。
【画像ギャラリー】秘伝の味と誇りを守る!! トヨタのクルマづくりに込めたモリゾウさんのプライド(14枚)画像ギャラリーマスタードライバーとは?
トヨタ社内でクルマの味付けを最終的に決める役割が「マスタードライバー」だ。
豊田章男会長は副社長時代に、当時マスタードライバーを務めていた成瀬弘氏から「運転のこともわからない人に、クルマのことをああだこうだと言われたくない。月に一度でもいい、もしその気があるなら、僕が運転を教えるよ」と言われたことをきっかけに成瀬氏に師事。
売れるクルマではなく、いいクルマをつくらなければならないという危機感を共有した。
成瀬氏が2010年に事故で急逝すると、豊田章男会長がマスタードライバーに就任。トヨタの「もっといいクルマづくり」を牽引していることはご存知のとおりだ。
【画像ギャラリー】秘伝の味と誇りを守る!! トヨタのクルマづくりに込めたモリゾウさんのプライド(14枚)画像ギャラリー















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