フィットとN-BOXの影響!! ヒット車の裏にあるジレンマ
もっとも、ホンダの歴史を振り返れば、こうしたリスクと挑戦は常に表裏一体だった。例えば2000年代初頭に登場したコンパクトカーのフィットは、ホンダ独自のMM思想、すなわち「マン・マキシマム、メカ・ミニマム」という設計哲学を極限まで追求したモデルだった。
小さなボディの中に最大限の居住空間を確保したそのパッケージングは大きな話題を呼び、世界的なヒット作となった。しかし私は当時、その成功の裏側にある問題を直感していた。最も影響を受けるのは同じホンダのシビックではないか、という懸念である。
実際、ディーラーでシビックを検討していた顧客が、新型フィットを見てそちらに流れるケースが少なくなかったと耳にした。同様の構図は2012年に登場したN-BOXでも見られた。軽自動車でありながら左右両側スライドドアを備えたスーパーハイトワゴンというコンセプトは、当時としては画期的だった。
質感や装備水準も非常に高く、日本市場で圧倒的な販売台数を記録するホンダの主力モデルとなった。しかし、この時も私の頭に浮かんだのは同じ疑問だった。N-BOXの登場はフィットのユーザーを奪うのではないかという直感である。
結果として、コンパクトカーを検討していた顧客の一部がN-BOXへ流れたと言われており、ホンダのラインアップには自社内競合とも言える現象が少なからず存在している。その背景には、創業者である本田宗一郎の思想があるのかもしれない。
技術者が理想の製品を作るという文化はホンダの最大の魅力であるが、同時に商品戦略という観点では必ずしも効率的とは言えない面もある。筆者自身、N-BOXを2台所有している。FFと4WDを用途に応じて使い分けているが、日常の足としてこれほど完成度の高いクルマはそう多くない。
ただし近年のモデルを見ると、販売台数を維持し、企業としての利益効率を高めるため、コスト圧縮の影響で質感の面で微妙な変化も感じる。結果として私が選んだのは初代最終型のターボモデルだったというわけだ。
二輪と四輪の成熟差も!? 技術力は健在も課題あり
ホンダの技術力そのものを疑う人はいないだろう。特に二輪部門の技術力は現在も世界トップクラスである。例えばNC750に搭載されたDCTでは、その完成度の高さに驚かされた。一方で四輪のヴェゼルに搭載された初期のDCTには熱問題や変速タイミングなど課題があった。
二輪と四輪の技術が必ずしも同じ速度で成熟するわけではないという典型的な例といえる。現在のホンダは、二輪、四輪、船外機、航空機など多様な事業を展開している。
この多角化は企業としての強みでもあるが、四輪部門にとっては開発資源の分散という側面も持つ。大ヒットモデルが生まれなければ、新しい技術を量産車へ投入する余力はどうしても限られてしまう。デザイン面もジレンマがある。
最大市場である北米を意識したスタイルは、日本市場では必ずしも受け入れられない。一方でN-BOXのように国内市場を徹底的に見据えたモデルは、逆に海外からも高い関心を集めている。結局のところ、国内で魅力的な車は海外でも魅力を持つ。
シビック タイプRやS660が世界中のファンから支持されているのはその証拠だ。かつてスーパーカブがモータリゼーションを支え、N360や初代シビックが庶民の足として普及したように、ホンダの本質は身近な革新にある。
今、同社に必要なのは海外市場ばかりを見つめることではなく、自分たちの足元をもう一度見直すことではないだろうか。モータースポーツも同様だ。参戦と撤退を繰り返すのではなく、継続することで技術も人材も蓄積される。そうした基盤の上にこそ、本来のホンダらしいものづくりが再び花開くのだと考えている。
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