日本の自動車産業において、いまや一大拠点となっているのが「九州」だ。トヨタ、日産、ホンダ(二輪)といった錚々たるメーカーが軒を連ねるこの地で、「軽自動車」の生産を圧倒的な規模で牽引するダイハツ九州の大分工場には日本のものづくりの未来を明るくするヒントがたくさんあった。
文/写真:ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】ダイハツ工場、驚異のメカニズム! 九州から日本を支える軽自動車生産の現場を激写!(9枚)画像ギャラリー日本の軽自動車の4台に1台がここダイハツ九州の大分工場で生産される!
1960年群馬県のダイハツ前橋製作所での初代ミゼットの生産がダイハツ九州のルーツになるが、生産能力の拡張と、次世代工場への対応、そしてダイハツグループの「西日本の中核拠点」を目指して2004年に大分県中津市へ移転・稼働し、2006年からはダイハツ九州株式会社となった。2008年にはエンジンを生産する久留米工場も稼働し、九州で一気通貫の軽自動車づくりが可能になった。
そこからの快進撃は凄まじいのひと言に尽きる。2004年当初は年間12万台レベルだった生産台数は、2007年の「第2工場」稼働、2008年の「久留米工場」稼働(エンジン生産)を経て右肩上がりに急成長。直近の2025年度データを見ると、ダイハツ九州の年間生産台数は44.1万台に達している。
これは全軽自動車の生産台数179万5000台の約4分の1にあたる。つまり軽自動車の4台に1台はここ大分工場で生産されるのだ。
大分工場は第1と第2の二つの工場を持つが、いずれも軽自動車に特化しており、第2工場はミライース、タフト、ムーヴ、ムーヴ キャンバス、4つの乗用車を作る。
一方の第1工場はハイゼット トラックやハイゼット カーゴ、アトレーにムーヴ キャンバスが同じラインで組み立てを行う「多品種混流」ラインとなっているのが大きな特徴だ。さらにe-アトレーやe-ハイゼット カーゴ、アトレーデッキバンやハイゼット トラックベースのダンプカーや保冷車といった特装車も同じラインで作っているというから驚かされる。
なぜ多品種混流が可能になったのか? その経緯にダイハツ大分工場がカイゼンによって生産を向上させてきた秘密がある。
「失敗」から生まれた逆転の発想! 世界基準となった「SSC」とは?
ダイハツ九州を語るうえで絶対に外せないキーワードがある。それが、ダイハツのモノづくりの源泉である「SSC(シンプル・スリム・コンパクト)」だ。
実は、2004年に稼働した大分「第1工場」は、当初、SSCに真正面から向き合い、高度な自動化を推し進めた「高自動化汎用ライン」だった。上空を重厚長大な搬送設備が行き交い、無人運搬車(AGV)が多用される、いわば“ハイテク工場”の最先端を目指したのだ。
しかし、ここに落とし穴があった。複雑すぎる設備はひとたびトラブルを起こすと長時間のライン停止を招き、故障対応や挽回生産に追われるという「負の連鎖」を引き起こしてしまった。
「重厚長大で複雑な設備がダメなら、徹底的にシンプルにすればいい。人の手も活かし、誰もが扱いやすく安定したラインを作ろう」という考え方から生まれたのが、2007年に稼働した大分「第2工場」だ。ここで具現化された「SSC」のアプローチは徹底していた。

1. スペースの削減(コンパクト): 建物面積を従来の「滋賀第2工場」の15万7000平方メートルから、一気に3分の1となる5万3000平方メートルへと縮小。第1工場と比較しても半分の面積だ。
2. 工程の短縮(スリム): 無駄な移動や搬送を極限まで削ぎ落とし、生産ラインをスリム化。
3. 設備の簡素化(シンプル): 壊れにくく、直しやすいシンプルな設備へ転換。設備投資額も第1工場に比べて40%削減した。
結果として、「従来の半分の面積・投資額で同等の生産能力を確保する」という、世界中の自動車メーカーが驚く超高効率ラインが完成した。
第2工場はSSCのマザー工場となり、ダイハツの強みである「良品廉価」を追求したモノづくりが可能になった。
面積が狭くなれば当然、冷暖房や照明などのエネルギー効率も劇的に高まり、CO2削減という環境対応にも直結する。この大分第2工場で確立されたSSCのノウハウは、その後、マレーシア工場やインドネシア工場、さらには京都や滋賀の既存ライン、そしてトヨタとの協業拠点(タイ、ベトナム、ブラジルなど)へと世界展開される「マザー工場」としての役割を果たすことになった。
そして、最も大きな影響を与えたのが大分第1工場だ。第1工場もSSCに取り組みロボットの活用や組み立てラインの工夫によって生産性を大きくアップさせることに成功した。
特に組み立てラインはインパネやメインハーネスを装着する前艤装、エンジンやリアアクスルを装着する足廻りライン、ガラスやドア、シートなどを装着する後艤装、そしてエンジンやラジエター、フロントアクスルなどを組み立てるサブ区の4つに分け、さらにサブ区に全30種という特装車のラインも作ることで多品種混流が実現した。
「お客様のニーズに応えるモノづくり」が軌道に乗ると社内ではさらなるロボットの活用による作業員の負担軽減や若手の技能教育に力を入れ、個性豊かな車種を効率よく作ることに務めている。
「大分・久留米の地元採用が92%」! 九州に活気を吹き込む若きプロたち
ダイハツ九州の大分工場の素晴らしさは「人づくり」にもある。地域密着度と人材育成の熱量にある。
2026年5月時点での同社の正規社員数は3086人。注目すべきは、そのうちの「92%(2853人)」が地元の大分(中津)や久留米での採用という点だ。完全に地域に根差し、地元の雇用と経済を支える大黒柱となっている。しかも、平均年齢は「36.3歳」と若い。
この若い力を「プロ」へと育てるため、工場内には「メカニズム道場」と呼ばれる実践的な教育環境が整備されている。教科書を読むだけでなく、実際の溶接ポータブルガンや、実物の金型を使い、現物を見ながら分解・点検・補修スキルの要領を体で覚える。
さらに、地元の自治体や大学と産官学連携した「金型メンテ・補正スキル向上活動」なども実施しており、地域のモノづくり全体の底上げにも貢献しているのだ。
多品種混流と良品廉価を実現した高い生産性と地元に密着し、若いモノづくりのプロを育てることを両輪にしたダイハツ九州の取り組みは、日本のものづくりの未来を明るくするヒントがたくさんあった。モノづくり日本はまだまだ発展できる!
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