2017年11月から新東名高速の新静岡〜森掛川の区間で110km/hへ制限速度が引き上げられた。事故が増えそうなどさまざまなリスクが懸念されたが、静岡県警によるとなんと事故件数が減少したという。
高規格な高速道路ということもあるのかもしれないが、なぜスピード制限を上げることで交通事故が減ったのか? そのカラクリにせまります。
文:永田恵一/写真:ベストカー編集部
■取り締まりが増えたことが事故減少の要因?!
2017年11月1日に新東名の新静岡インターから森掛川の50.5kmの区間の最高速度が100km/hから試行という形で110km/hに引き上げられた。
つい先日、最高速度引き上げ後半年間の人身事故と物損事故の発生件数が静岡県警高速隊より発表された。これには少し驚くものがある。
発表によると同区間の2018年4月末までの半年間の人身事故の発生件数は、最高速度引き上げ前の前年同月(2016年11月から2017年4月)の22件に対し13件と半分近くに減少したというのだ。
しかし物損事故は77件から88件に増加したという。
渋滞中の追突に代表される物損事故に関しては、前方不注意が主な原因で増減があることや最高速度引き上げの影響ではないのは納得できるところ。
人身事故もインターチェンジが5つある50.5kmの区間で、ザックリと言って前年同月が週に1回起きていたのが2週に1回に減ったことになる。
この結果は「最高速度が上がったから事故が増える訳ではない」という裏付けになったと考えていいだろう。
特に人身事故が減った要因としては以下の点が考えられる。
(1)速度引き上げ後1カ月の110km/h試行区間のスピード違反の摘発が前年同月の約450件から約200件に激減したというデータがある。
通常の白/黒のパトカーの巡回による「見せる取り締まり」やあおり運転に代表される車間距離不保持違反、追い越し車線を走り続ける通行帯違反の取り締まりを強化したこと結果だ。
(2)現実は別問題としても大型トレーラーだけでなく、大型トラックも通行帯(車線)を左車線に限定したことで、他の車両との離れて走る方向にはなった
(3)最高速度引き上げで乗用車同士の速度差が減った
といったことが考えられる。
■設計速度120km/hの新東名のポテンシャルもある
もともと新東名は120km/hが設計速度とされており、道路の設計からしても110km/hの制限速度はまだゆとりのあるものといえる。
ドライバーに委ねられる部分が大きくなるのは事実にせよ、合法的なスピード上限が上がり、より早く目的地へ移動できることになったのは歓迎すべきことだろう。
新東名110km/h試行区間の人身事故減少の結果をきっかけに、設計速度の高い高速道路の最高速度は引き上げられる方向になるだろう。
特に中日本道路の調査では110km/h試行区間の実勢速度は追い越し車線を例に挙げると上り線119km/h、下り線118km/hと試行前とほぼ変わらないという。
今の日本の高速道路では非常識なスピードを出すドライバーは激減している。
また交通の円滑な流れを乱すようなスピード違反やあおり運転、追い越し車線を走り続けるといった目に余る違反の取り締まりの強化、さらに大型トレーラーとトラックの左車線の走行を徹底すれば、最高速度を引き上げても事故数は増えないのではないだろうか。
しかし、最高速度は「そのスピードで走らなければならない」というものではなく、安全なスピードは当然ながら流れやその時乗っているクルマによって変わってくる。
それだけに今後も最高速度が引き上げられてもくれぐれも無理のないスピードでの走行を心掛けてほしい。
【まとめ】
今回の速度引き上げを受けて、警察もその区間での事故を起こすことを徹底的に避けている様子もある。しかし結果として事故が減ったことは歓迎すべき動きだろう。
また現在は東北道でも一部区間での110km/h化がスタートしている。クルマの安全性の向上などを受け高速化が進むのを歓迎するいっぽうで、交通安全とのバランスなどにも注視していきたい。
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