トラック大国となるためには、人口、経済規模、自動車技術などさまざまな条件が必要。ヨーロッパ、アメリカ、日本はその条件を満たしているし、最近では中国、インドなども勢いがあるが、世界にはそういう国ばかりがあるわけではない。むしろ、その逆が大半だ。
では、そういった条件を満たしていない国には自動車産業がないのかというと、答えはノー。例えばロシアや旧ソ連構成国、旧ユーゴスラビア構成国には、旧体制下で生まれたいくつものトラックメーカーが存在。内需や輸出向けに、さまざまなトラックを生産している。
というわけで、今回は無骨でカッコいいロシア〜中東欧地域のトラックを大紹介しちゃいます!!
文/緒方五郎、トラックマガジン「フルロード」編集部
※2020年12月10日発売「フルロード」第39号より
無骨だけどハイテクな
ロシアントラック
ロシアは世界で一番国土が広く、その面積は実に日本の約45倍。いっぽう、人口は1億4千万人強で、新車の大中型トラック市場も年7〜8程度と、意外に日本と規模が近い。
大型トラック市場は、半数近くを国産のカマズ(KAMAZ)が占め、ヨーロッパのメーカーも台頭中。国産のゴーリキー自動車工場(GAZ)やウラル(URAL)も堅調だが、最近は中国のメーカーの進出も始まっており、競争が激化している。
車両のクラス分けは車両総重量(GVW)3.5t未満、3.5〜12t、12t超とEUに準拠。舗装率はそこまで低くないが、国土の55%が永久凍土で覆われ、森林も多いことから、総輪駆動車など悪路走破性に優れるモデルが比較的充実している。
エンジンやトランスミッションは欧米サプライヤー製が基本で、中国製を搭載するモデルも存在。近年はヨーロッパのメーカーとの競合を意識した高性能モデルが登場し、AMT(機械式マニュアルトランスミッション)やACC(自動追従クルコン)など最新機器を搭載するモデルも増えている。
社会主義体制の崩壊と連邦解体の影響が今も残り、国際関係でもさまざまな問題を抱えているロシアだが、保有台数が多く、資源開発など経済成長のポテンシャルを秘めていることからトラック市場としての期待値は高そうだ。
独特の雰囲気をまとう
中東欧のトラック
ロシアと同じく、かつて社会主義陣営だった中央〜東ヨーロッパにも複数のトラックメーカーが存在する。だが、多くの国がEUに加盟し、ヨーロッパのトラックを普通に買えるため、輸出や軍需に強みを持つメーカー以外は消滅の道をたどっている。
旧ソ連構成国のベラルーシにはミンスク自動車工場(MAZ)が存在。ロシアをはじめ輸出で一定の市場を持っている。
いっぽう、同じ旧ソ連構成国のウクライナにあるクレメンチュク自動車工場(KrAZ)は、対露関係の悪化もあり低迷。消滅間近と見られる。
ソ連の支配下にあったルーマニアは、第二次大戦後に独自の自動車産業を育成。MANの技術を導入した「ルーマニアのMAN」ことローマン(ROMAN)が生産を続けていたが、16年末に消滅。19年設立のATPトラックスが中国の陝西(せんせい)重汽のノックダウン生産を行なっている。
ソ連と一線を隠す社会主義国家の旧ユーゴスラビア諸国では、セルビアのプリボイ自動車工場(FAP)が軍用トラックでなんとか存続。スロベニアのマリボル自動車工場TAPは96年に消滅後、ブランドのみ復活した。
チェコには、かつてトラックメーカーが5社もあったが、現在生き残っているのは大型総輪駆動トラック専業のタトラ(TATRA)と、小型トラック専業のアヴィア(AVIA)の2社のみ。アヴィアに至っては新型コロナの影響で事業廃止が決まっているという。
このほか、ポーランドにイェルチ(JELCZ)、FSCスター(STAR)というメーカーがあったが、FSCスターはMANに吸収された。いっぽう、イェルチはバス、民生用トラックの生産から撤退。現在は軍用トラック専門として存続している。
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