コモンレール噴射の登場で改善されたが…
以上のように、燃焼音でガソリンエンジンより不利なディーゼルエンジンですが、最新のクリーンエンジンでは、次のような技術で燃焼音の改善を図っています。
・コモンレール噴射システムによる燃料噴射制御
1990年代後半に実用化されたコモンレール噴射システムによって、燃料噴射の圧力、噴射時期、噴射回数を自在に制御できるようになりました。特に効果的なのは、1回の燃焼行程中に噴射を4~6回に分ける多段(マルチ)噴射で、燃焼を緩慢にしたことで、燃焼音が大幅に低減されました。さらに、高級ディーゼル車では高応答で噴射制御ができるピエゾ噴射弁を使って、さらなる排ガスと燃焼音の低減を図っています。
・低圧縮比ディーゼルエンジン
前述したように、現在のディーゼルエンジンは、圧縮比は15~17に設定されていますが、2000年頃までは圧縮比を下げると低温始動性が悪化するという課題があったため、圧縮比は18~20に設定されていました。これもコモンレール噴射や可変バルブ機構によって解決されたものです。ちなみに、マツダのSKYACTIV-Dシリーズでは、圧縮比は15以下と、低めに設定されています。
・遮音や吸音による車室内への燃焼音をシャットアウト
燃焼音そのものの低減ではありませんが、近年のディーゼル車は積極的に吸音材や遮音材を多用して、遮音性能を上げています。具体的には、エンジンルームと車室間の隙間を塞いだり、各部位に吸音材を貼って音圧レベルを下げています。ただ、この遮音性能の強化が、ディーゼル車の価格が高い要因のひとつにもなっています。
ほかにも、マツダのSKYACTIV-Dでは、「ナチュラルサウンド・スムーザー」というダンパーをピストンピンに内蔵して燃焼音を低減する手法を採用しています。これは、燃焼で発生するピストンの共振を抑制するのが狙いで、一定周波数(3.5kHz)の燃焼音を下げる効果があります。
燃焼方式が変わらない限り、静粛性でガソリンに勝つことは難しい
このように、2000年以降に実用化されたコモンレール噴射システムなどの採用によって、ディーセルエンジンの排ガスと燃焼音は飛躍的に改善しました。
しかしながら、ディーゼルエンジンが、高い圧縮比で自己着火燃焼をベースにしている限り、静粛性でガソリン車を上回ることは難しく、音と振動は、ディーゼルエンジンの宿命でもあります。
ディーゼルモデルが多い欧州でも、需要が減っている
ディーゼルモデルが豊富な欧州でも、近年はディーゼルモデルの需要が減少傾向にあり、2010年頃まで50%程度あった欧州のディーゼル車のシェアが、最近は30%を切るレベルまで落ち込んでいます。高いエンジン本体コストに加えて、厳しい排ガス規制対応のための触媒などの後処理システムにコストがかかるためです。
ガソリン車では味わえないトルクフルな走りが体感できるディーゼル車。カーボンニュートラルの流れのなか、今後どのような道を辿るのか、注目していきたいと思います。
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