名古屋、京都、大阪と奈良、賢島などを結び、沿線には伊勢神宮など見どころ満載の近畿日本鉄道に、この春、新たな観光特急が誕生します!! これまでも伊勢志摩エリアを走る観光特急「しまかぜ」、大阪阿部野橋と吉野を結ぶ「青の協奏曲」といった観光特急を運行してきた近鉄ですが、今回の列車は一体どのような魅力を持っているのでしょうか。
文、写真/村上悠太
■三都を結ぶ、その名も「あをによし」
今回新しく誕生するのは観光特急「あをによし」。4両編成の観光特急列車で、大阪と奈良、京都を結ぶ。1日6便が設定されており、そのうち4便(2往復)は京都~近鉄奈良間、2便(1往復)が大阪難波~京都(近鉄奈良経由)で運行され、運行日は原則木曜日を除く毎日運行となっている。デビューは2022年4月29日だ。
列車名となっている「あをによし」とは古都・奈良に掛かる枕詞で、奈良の都の美しさをイメージして命名。奈良といえば日本を代表する観光地だが、実はこれまで観光に特化した列車というのはあまり運行されてこなかった。今回近鉄はその点に注目し、この列車を企画設計した。奈良はJR線の駅もあるものの、どちらかと言えば観光拠点として便利なのは近鉄奈良駅。こうした事情にも今回の「あをによし」は、より大きな魅力を付加してくれる存在だ。
4両編成で登場した「あをによし」は2021年まで通常の特急車両として活躍していた12200系という車両をリノベーションして作られた編成だ。沿線に歴史的名所を多く持つ近鉄らしいトリビアとして、改造に用いられた旧編成にはエリザベス女王が乗車した過去も持つ。改造費は3.3億円となっている。
「奈良の和」の美と尊さを表現した車両は「冠位十二階」でも最上位とされた紫色「紫檀メタリック」をあしらい、きらめくエンブレムには縁起のよい文様として知られる「吉祥文様 花喰鳥」を用いる。
車内は2タイプのシートで構成。1・3・4号車は2名での利用を想定した「ツインシート」。対面タイプと窓に向かってお互いに45度の角度が付いた特注のシートが並ぶ。2号車は「サロンシート」で、4名定員のコンパートメントタイプのシートでプライベート感がある佇まいと最大限まで広げられた大きな窓が魅力だ。また、2号車には乗客ならだれもが利用できる「販売カウンター」も併設。オリジナルグッズやドリンク、軽食などが楽しめる。さらに4号車には沿線にちなんだ書籍を集めたライブラリーまで備える。
運行面で注目したいのは第1便と第6便の大阪難波~京都間を走る便だ。それぞれ午前中に京都行き、夕方早めの時間に大阪難波行きが運行されるダイヤになっており、どちらの便も近鉄奈良を経由する。大阪難波~京都間の特急列車は「あをによし」登場以前は1992年を最後に設定されておらず、今回が久々の復活となる。
同駅間を乗り通すと約1時間20~30分となり、JRなどを使用するより時間がかかる上、観光特急列車なので追加料金もかかることから、京阪間の移動については他の鉄道路線に比べて速達性、価格面の両方で「あをによし」はやや劣勢だ。
ただ、そもそもとして「あをによし」は一刻も早く目的地につくことが求める列車というよりは、数々の豪華設備を堪能したいし、なんなら京都~近鉄奈良間の35分少々の乗車では正直物足りないくらいの列車だ。さらに大阪のミナミから乗り換えせずに京都へ直接向かうことができるのも大きな特徴。加えて、観光色の強い列車というと、土休日のみ運行という列車が多いが、「あをによし」は木曜日以外は基本的に毎日運行というのも見逃せない。
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