“無難”が車をつまらなくした!? なぜ減った? 独創的な挑戦車たち


商業的には失敗でもチャレンジ精神に溢れていたホンダ車たち

初代インサイト(1999-2006年)/アルミボディで車重は僅か820kg、Cd値0.25と空力性能も磨き上げ超低燃費を実現。販売面では通算2000台程度と振るわなかったが、その成果が2代目で開花。一時的にプリウスを超える人気車となった

 そもそも失敗作にも2種類あって、市場で売れなかったという「商業的な失敗」と、車としてダメだった「技術的失敗」がある。

 このうち、誰が見ても「技術的に失敗だったよね」といえるような車は、多分ここ半世紀くらいは出てない。失敗作のほとんどは、市場動向の読み違い、コストコントロールの失敗、技術的・デザイン的冒険が裏目に出た、といったケースだ。

 例えばホンダの初代インサイトは、最初から商業的な成功を狙って作られたわけではなく、世界最初の3リッターカー(100kmを3Lの燃料で走る。つまりリッター33.4km走る車)として企画された。

 だから、コストも実用性も度外視で、専用の1L・3気筒エンジン、NSXと同じアルミボディ、空力に徹した2シータークーペと、技術的にはやりたい放題の意欲作。見事に燃費のテーマはクリアしたけれど、実用性が不十分だったから大した数は売れず、おまけに超高コストで大きな赤字を残したといわれている。

 ちょっと前のホンダはこういう「ひょっとしてこういう車作ったら売れるのでは?」というチャレンジ精神が旺盛で、CR-Xデルソル、HR-V、エディックス、エレメントなどの失敗作がたくさんあった。

CR-Xデルソル(1992-1997年)/オーソドックスな3ドアハッチから一転、画期的な電動オープンルーフを採用。商業的には失敗作だったが、他に例のない偉大な意欲作だった

 デルソルはトランストップという電動ルーフが有名だが、そもそも2シーターのパーソナルカー市場という、魚のいない池に釣り糸を垂れたような車。

 2列横3人がけシートのエディックス、SUVなのにぺったんこなHR-V、観音開きドアのエレメントなど、どれも新しい市場を創ろうとして玉砕している。

 決してホンダを馬鹿にしているわけではなく、こういうチャレンジ精神を発揮できる環境がひと昔前のホンダにはあった、ということだ。

 もちろん、会社としては失敗作ばかりではやって行けないわけだが、ヒット作を狙って作れるなら誰も苦労はしない。こういう失敗作の屍を乗り越えたところにしか大ヒットは生まれない、そう考えるべきなのだ。

再評価されたパイオニアにみる“意欲作”の意義

初代プリメーラ(1990-1995年)/欧州車にも影響を与えたと言われる意欲作。販売実績以上に、日本車のレベルを引き上げた技術的評価が高いモデルのひとつだ

 また、歴史の風雪に耐えて後に再評価されるクルマだってある。

 初代プリメーラや三菱i-MiEVあたりは、販売台数は振るわなかったが、自動車の歴史に残る車といっていい。

 プリメーラ開発時は日産が901活動で世界最高のシャシー作りに燃えていた時代。商品主管だった津田靖久さんは、その前にVWとの合弁事業で座間工場でのサンタナ生産を担当されていた方だが、「あれは相当に勉強になった」と述べている。

 前マルチリンク/後ストラットのサスペンションは、現在では考えられない贅沢な造りで、結果として「FFのハンドリングに革命を起こした」と評価される名車が生まれた。そして、その陰にはサンタナから学んだ欧州車テイストが注ぎ込まれていたのである。

i-MiEV(2009年-)/ミドシップの軽EVとしてリーフよりも早く発売。画期的なモデルだったが2018年上半期の販売台数は9台と販売面は不振。2018年4月より登録車となった

 三菱i-MiEVは、典型的な「生まれるのが早すぎた」車といえる。

 この時代にピュアEVに挑戦するというのは、あり得ないほどリスクの高いテーマ。電池以外の投資を最小限としなければ、どう考えても超赤字事業となる。

 こういう条件のなかでパズルを組み合わせていった結果、スマートとエンジンプラットフォームを共有化を図り、軽のマーケット向けには同じボディでエンジン車とEVを出す。さまざまなリスク分散が図られたのだと思う。

 結果的には時期尚早で「世界最初の量産EV」というタイトルだけが残ったわけだが、そのチャレンジ精神は敬服に値する。

 失敗作というのは当事者にとっては辛いものだけれど、自動車会社のみならず、社会全体にこういうチャレンジ精神を讃える文化がないと、本当に革新的なものは出てこない。

 赤字すれすれの凡庸な車をダラダラ作るくらいなら、何年かに一回でいいから失敗を恐れない冒険的なクルマ作りに挑戦してもらいたものであります。

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