再評価されたパイオニアにみる“意欲作”の意義
また、歴史の風雪に耐えて後に再評価されるクルマだってある。
初代プリメーラや三菱i-MiEVあたりは、販売台数は振るわなかったが、自動車の歴史に残る車といっていい。
プリメーラ開発時は日産が901活動で世界最高のシャシー作りに燃えていた時代。商品主管だった津田靖久さんは、その前にVWとの合弁事業で座間工場でのサンタナ生産を担当されていた方だが、「あれは相当に勉強になった」と述べている。
前マルチリンク/後ストラットのサスペンションは、現在では考えられない贅沢な造りで、結果として「FFのハンドリングに革命を起こした」と評価される名車が生まれた。そして、その陰にはサンタナから学んだ欧州車テイストが注ぎ込まれていたのである。
三菱i-MiEVは、典型的な「生まれるのが早すぎた」車といえる。
この時代にピュアEVに挑戦するというのは、あり得ないほどリスクの高いテーマ。電池以外の投資を最小限としなければ、どう考えても超赤字事業となる。
こういう条件のなかでパズルを組み合わせていった結果、スマートとエンジンプラットフォームを共有化を図り、軽のマーケット向けには同じボディでエンジン車とEVを出す。さまざまなリスク分散が図られたのだと思う。
結果的には時期尚早で「世界最初の量産EV」というタイトルだけが残ったわけだが、そのチャレンジ精神は敬服に値する。
失敗作というのは当事者にとっては辛いものだけれど、自動車会社のみならず、社会全体にこういうチャレンジ精神を讃える文化がないと、本当に革新的なものは出てこない。
赤字すれすれの凡庸な車をダラダラ作るくらいなら、何年かに一回でいいから失敗を恐れない冒険的なクルマ作りに挑戦してもらいたものであります。
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