信号待ちなどで、目の前を走り去るクルマたちを何気なく眺めていると、いまだに携帯で通話したり、画面を見たりしながらクルマを運転しているドライバーを見かけることがある。
各種研究によると、運転者が画面を見ていて危険を感じる時間、つまりふと画面を見やって我に返り、再び前を見るまでの時間は概ね「2秒」で一致するそうだ(警察庁のホームページによる)。
そして、たとえば時速30kmで走っていた場合、クルマがその2秒間で進む距離は16.7mに達するのだという(記事の最後に速度別の一覧あり)。
時速30kmで16.7m。歩行者が道路を横断したり、前の車が渋滞などで停止していたら、事故を起こしてしまう速度・距離としては十分だろうと、企画担当は考える…のだが、冷静に計算しなくてもそれくらいのことはなんとなく肌でわかるはずだ。しかしそれでも携帯・スマホの画面を見やり、運転し、事故を起こすケースは、実は増加している。
そんな中、警察庁がそんな「ながらスマホ」に関しての厳罰化案を公表したという。
※本稿は2019年1月のものです
文:ベストカー編集部/写真:AdobeStock、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年2月10日号
■スマホ・携帯の使用が原因となった死傷事故は1885件(2017年)
2016年(平成28年)に愛知県一宮市で、助手席に置いたスマートフォン(スマホ)でゲーム『ポケモンGO』を操作しながら運転していたトラック運転手が、当時9歳だった小学4年生の男の子をはねて死亡させたことを端緒に、厳罰化の気運が高まった「ながら運転」。
この「ながら運転」に対する罰則をさらに強化しようと、警察庁が公表したのが今回の「道路交通法改正試案」になる(2018年12月20日)。
警察庁の発表によると、2017年(平成29年)に携帯電話使用等の道路交通法違反で検挙された件数は91万5797件。これは道路交通法違反全体の14.1%にもおよぶ数で、最高速度違反(147万8281件)、一時不停止違反(132万7461件)に次ぐ、第3位に上る。
また2017年にスマホ・携帯の使用が原因となった死傷事故は1885件起きており、特にスマホなどの画面を見る目的(グラフ中の「画像目的使用」がそれ)で使用していたことに起因する交通事故は1012件発生。これは5年前(2012年)と比較すると、じつに約1.8倍に増加しているという。
前述の事故が起きた2016年(平成28年)は前年の20件から17件へと一旦下がったものの、2017年(平成29年)には再び増加に転じ、2015年(平成27年)を超える24件を記録しているのだ(下の表を参照)。
■罰則の強化も検討中!
今回発表された試案には、この運転中の携帯電話の使用に関する罰則強化も盛り込まれている。
それによると、運転中にスマホや携帯電話を使用した場合、事故を起こしていない「保持」の場合でも、現在の「5万円以下の罰金」から「6月以下の懲役または10万円以下の罰金」に引き上げられ、反則金は大型車が現行の7000円から2万5000円、普通車が現行の6000円から1万8000円にそれぞれ引き上げられる予定。
反則金とともに違反点数も課せられるが、現在の1点から何点に引き上げられるのかを警察庁に問い合わせたが、本稿の締め切りまでに回答が届かなかったため、わかり次第続報をお届けしたい。
そして「保持」よりも重い、「交通の危険」と判断された場合は、非反則行為で現在の「3月以下の懲役または5万円以下の罰金」から「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」と、より厳しい内容に変更されている。
反則金を3倍にしたら、スピード違反の取り締まりと同じで、警察が潤うだけじゃないか、なんて皮肉を言う人もいるかもしれないが、厳罰化しないと改善されない運転者の意識を直すほうが大切だということを、ぜひとも理解いただきたい。
この改正案、2019年の通常国会までにまとめられ提出されるという。
上図は冒頭でもご紹介した、「車が2秒間に進む距離」を時速別にまとめたもの。
なお、外部からの必要な音が聞こえる状態で使用する「ハンズフリー」は、交通事故の発生件数がすくないためか、現在のところ違反になっていない。が、通話中は少なからず注意力が散漫になるので、やはり注意が必要だ。
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