その機能があること自体は知りつつも、周りの迷惑やトラブルの原因になるのでは……と、使用するのをついつい躊躇してしまいがちなのがヘッドライトのハイビーム。ところが近年、安全性という観点から夜間走行でのハイビーム使用を推奨する声が増えてきている。ロービームとハイビームの違いや、それぞれに適したシチュエーションを知り、より安全で快適なナイトドライブを楽しもう。
文/井澤利昭、写真/写真AC
ハイビームとロービームの違いがわかれば、その使いどころが見えてくる!?
ヘッドライトの基本的な機能として、ほぼすべてのクルマに備わっているロービームとハイビームの切り替え。法令上の正式な名称は、ロービームが「すれ違い用前照灯」、ハイビームは「走行用前照灯」とされており、前者が40m、後者が100m先にあるクルマや人、自転車など、道路上にある障害物を確認できるだけの性能を有さなければならないと定められている。
その使用方法については、道路交通法の第52条第2項にも「車両等が、夜間、他の車両等と行き違う場合又は他の車両等の直後を進行する場合において、他の車両等の交通を妨げるおそれがある時は、車両等の運転者は、政令で定めるところにより、灯火を消し、灯火の光度を減ずる等灯火を操作しなければならない」とあるように、対向車や前走車がある場合はロービームを使うことが義務付けられており、まさに「すれ違い用前照灯」と呼ばれるゆえん。
いっぽうでハイビームについてはロービームのような使用規定は存在しておらず、照射範囲が広く「走行用前照灯」という名称のとおり、夜間走行では本来ハイビームを使うのが基本とされている。
とはいえ街灯や建物の灯りがあり、周辺を走るクルマが多い都市部ではロービームでの夜間走行が一般的なのも事実だ。ハイビームでの走行が逆に取り締まりの対象となるのでは? という心配や、あおり運転と勘違いされてしまうかも? という不安を持つ人も多いかもしれない。
では、ハイビームとロービームそれぞれを使用する具体的なシチュエーションとはどのようなものなのだろうか。
暗闇で危険をより早く発見! 夜間走行時のヘッドライトはハイビームが基本
警察庁・交通局が公表している令和3年からの過去5年間の統計によると、クルマと歩行者による、いわゆる対人事故の多くが、周囲の視界が徐々に悪くなる薄暮時や夜間に発生している。その原因はクルマから歩行者や自転車などの発見が遅れたり、お互いのスピードが読みづらくなっているためで、事故防止のためにはまず早めのライトオンが必要となる。
加えて前走車や対向車がいない場合は、ロービームと比較して2倍以上の距離から歩行者などを見つけることができるハイビームを積極的に使用することが重要。夜間の直進時に発生した対歩行者の事故の半数以上が「ハイビームを使用していれば防げた」という調査結果(警察庁・平成29年上半期における交通死亡事故の特徴等について)もあり、平成29年からは国が定める「交通の方法に関する教則」でも、交通量が多い場合などを除き、夜間走行時は積極的にハイビームを使うことが推奨されている。
また、一般道のみならず高速道路での夜間走行もハイビームが活躍する場面。よりスピードが出る高速道路での落下物発見の遅れは、大きな事故につながる可能性が高く、前走車や対向車のないシーンではより遠くを見通せるハイビームを使うよう、日頃から習慣づけをしておくことが大事だ。
コメント
コメントの使い方クルマの通りがあまりない郊外では,クルマが多い街中と同じスピードを出すでしょう。この場合は,「ハイビームへの切り替え」が必要です。
ただ,街灯の少ない住宅街では,ハイビームが必要なほどのスピードを出すほうがおかしいですし,クルマより歩行者が多い状況でハイビームにすることは歩行者に対して迷惑です。この場合は,「ロービームのまま低速走行すること」が必要ですよね。