■誕生理由がN-VANと全然違う!! スペーシアベース発売の理由が衝撃
軽乗用車をベースに開発された軽商用バンには、ホンダN-VANもあるが、スズキとは事情が異なる。ホンダは他社に商品を供給するOEM関係が乏しく、量産効果を得られないため、今はスズキエブリイのような専用プラットフォームの軽商用バンを開発していない。そこで大量に生産されるN-BOXをベースに、N-VANを開発した。
しかし、スズキにはエブリイも用意され、スペーシアをベースに軽商用バンを造る切実な理由はない。それなのにスペーシアベースを開発した背景には、乗用車のスーパーハイトワゴンベースにした軽商用バンに、根強い需要があると判断したからだ。
開発者によると「遊びと仕事の両方に使える軽自動車が欲しい」「軽乗用車のように運転しやすい軽商用バンを使いたい」「軽商用バンでもカッコ良さや充実した快適装備が必要」といったユーザーの意見があったという。
その期待に応えたのがスペーシアベースだ。スズキには前述のとおり本格的な軽商用バンのエブリイがあるから、スペーシアベースはN-VANよりも乗用車に近い。外観、インパネ、運転席と助手席の座り心地、安全&快適装備は、軽乗用車のスペーシアとほぼ同じだ。後席と荷室だけが専用設計になり、荷物を積みやすい。専用のマルチボードをデスクに使って、リモートワークなどもしやすいように配慮されている。
スペーシアベースは、実際にはどのように使われているのか。販売店に尋ねた。「以前からスペーシアの後席を格納して荷物を積み、配達などに使う用途があった。そのようなお客様には、さらに荷室を使いやすいスペーシアベースが人気を得ている。また少人数でアウトドアに出かけたり、車内でデスクワークをするお客様にも好評だ」。
■ニーズ察知するのウマすぎ!! スズキの市場調査は大昔からお見事
スズキは1993年に、初代ワゴンRを発売した。この時点からワゴンRは、後席の背もたれを前側に倒すと座面も連動して下がり、平らで広い荷室が得られた。軽い荷物の配達といった仕事にも使われ、スズキは「軽乗用車のビジネスユース」に古くから慣れている。そして初代ワゴンRも、ミニバンのように天井と着座位置を高めた軽自動車の先駆けだった。
1990年に登場した三菱ミニカトッポは、着座位置がミニカと同様に低く天井だけを高めたが、ワゴンRは座る位置も含めて高く設定されて空間効率が優れていた。そのためにワゴンRは人気車となり、初代ムーヴなど追従する軽自動車も多く発売され、背の高い車種を中心とした今日の軽自動車市場が形成されている。
スズキはもともと薄利多売の軽自動車を中心に手掛けるメーカーだから、車両だけでなく、開発や生産も合理的に行わないと企業として存続できない。そのためにスズキは、エンジンやプラットフォームの共通化だけでなく、ひとつのボディを使って複数のタイプをそろえることが多い。現行ワゴンRにも、標準ボディ、カスタムZ、スティングレーがある。
またスズキは、日本のユーザーのカーライフを細かく観察して、時代に合ったヒット商品を生み出してきた。「こういうクルマが欲しかった」と喜ばれる商品開発を、他社に先駆けて定期的に行っている。
それが1970年の初代ジムニー、1979年の初代アルト、1993年の初代ワゴンR、2002年の初代アルトラパン、2013年の初代(先代)ハスラーなどで、スペーシアベースもこのなかに含まれる。
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