ウイングボディの一般貨物への応用
ボトル運搬ウイング車は、パレチゼーション(パレット輸送)を進める一般貨物業界で注目され、70年に日本フルハーフで初の一般貨物向けのウイングトレーラが完成する。
71年10月には、単車トラック用初の一般貨物向けウイングボディ加藤車体が製品化した。
一般貨物向けウイング車は、基本的には平床荷台にウイングを組み合わせたもので平ボディに近いが、ウイング専用の躯体を備える点に決定的な違いがある。
この71年当時はまだ幌ウイングだったが、加藤車体では電動油圧式ウイング開閉装置を実用化している(圧縮エア作動式ウイングを69年に開発していた)。
さらにアルミブロックアオリ、そしてアルミパネル張りのウイング、またウイングの水密パッキンなど、現在のウイングボディと同様のスタイル/装備も72年ごろには確立していたようだ。保冷ウイング車や非対称ウイングも現れている。
ウイングボディの普及と発展
80年代はウイングボディの実用新案の特許権満了によって前述2社以外の車体架装メーカーが市場に参入する。量産と競争によってウイングボディの性能/品質の向上と、価格の引き下げが進むことになり、さらに普及が加速した。
また80年代は冷凍車の断熱ボディ技術を応用した冷凍ウイングや、リフト機能付きウイングなどの派生タイプも相次いで登場した。
これは多様な輸送ニーズにウイングボディが応えてきた歴史であり、提案の歴史でもある。さまざまな得意分野を持つ、さまざまな車体架装メーカーが参入したことで、ウイングボディの可能性が引き出されていった。
即納完成車の時代へ
2000年代前半に登場したのがトラックメーカーの即納タイプのウイング完成車である。これはボディ開発とは次元が異なる話だが、こんにちまで続くウイング車の歴史には欠かせないものだ。
ここでの「完成車」とは、シャシーと架装を一体で売るクルマのことである。その「即納タイプ」とは、市場で最も売れ筋の車型(軸数、ホイールベース、エンジン出力)をベースに、同じく市場で使われているウイングボディの装備/仕様を調査した上で、その最大公約数的な装備/仕様を選定。それを標準化して完成車に盛り込んだクルマである。
これは納車されれば、即戦力として仕事に使えることを意味するが、仕様を画一化することで、受注に先行した見込み生産(計画生産)が可能となり、在庫があれば最短で数日〜1週間ほどで納車できるようになった。発注から納車まで長期間が必要な大型ウイング車の「即納」を実現したのである。
当時はオーダーメイドが常識の大型ウイング車にあって、極めてユニークな手法だったが、計画生産による納期短縮と割安感のある単価は、多くのユーザーの支持を得ることとなり、いまや大手フリートも即納ウイング完成車を発注するまでになっている。
このコンセプトは大型だけではなく、中型ウイング完成車にも導入され、トラックメーカーの即納ウイング完成車比率は漸増傾向にある。フルオーダーメイドの民需架装も根強く支持されているが、ウイング車の供給形態は今世紀で大きく変わったと言える。さらに詳しく知りたい方は「フルロード」第48号で!!
【画像ギャラリー】60年の歴史が丸わかり!! 車体架装メーカー各社の歴史的ウイングボディをチェック!!(7枚)画像ギャラリー