■100年以上変わらないアイディア
1910年代以降は、馬車の形から脱却したデザインの自動車がいくつも登場しているが、その時点で存在したトラックやバスには、既にダブルタイヤが装備されている。
一説によれば、ダブルタイヤを初めて製品化したのは、フランスのタイヤメーカー・ミシュランと言われている。積載量を倍にできるのが売り文句だったらしい。初登場が1908年頃と、ちょうど年代的にもマッチングする。
日本の場合、初期の自動車文化は欧米のコピーであるため、欧米がそうなら日本もそれに倣っている。
日本に路線バスが増え始めたのは1920年代とされている。その中で、1923年の関東大震災後に「円太郎」と呼ばれる急造の簡易バス車両が登場したが、こちらはベースになったフォードのTT型トラックが4輪ともシングルタイヤであるため、バス仕様も同等となっている。
1930年代に発行された自動車カタログを開くと、この頃には各種バス車両のスペック表に「複輪」や「ダブル」「デュアル」の記載が普通にあり、昭和初期にはダブルタイヤのバスが浸透していたと見られる。
その後、1950年代にフロントエンジン式のボンネットスタイルからリアエンジン式のキャブオーバー型へとシフトしつつ車体の大型化が進み、黎明期とは似ても似つかないほどバスの形が変化しても、ダブルタイヤの要素は同じまま、今日のバス車両へと繋がる。
世界的に見ると、ここ40〜50年のうちに始まったどころではなく、自動車の黎明期からダブルタイヤは使われ続けているわけだ。今や常識すぎてスルーしがちなダブルタイヤも、100年以上の歴史を持つ深みを想像すれば、見え方が変わってくるかも!?
【画像ギャラリー】新旧バス車両のリアタイヤを眺める(6枚)画像ギャラリー