■エンジン内部の摩耗が進んで10万km持たずにガタガタになることも!
エンジン内部にはさまざまな金属素材が使われているが、最も柔らかいのが錫をメインとしたメタルベアリングで、逆に一番硬いのはピストンリングやシリンダーライナー(アルミ合金エンジンのシリンダーに組み込まれる筒)、カムシャフトやギアなどに使われる鋼だ。
錫は柔らかいので、摩耗によって発生した金属粉も他の金属部品に影響を与えることは(比較的)少ない。だが鋼は別だ。
硬い金属粉は攻撃性も高く、摩耗粉がエンジン内部を循環することで更なる摩耗を引き起こす。
オイルフィルターがそうした摩耗粉をキャッチしてくれるので大丈夫じゃないか、という意見もあるだろう。しかし2つの理由で、そうした前提は崩れてしまうのだ。
■オイルフィルターにも限界があるって本当?
まずオイルフィルターに採用されているろ紙は、そのろ過性能にも限界がある。一般的なろ紙のメッシュは30ミクロン程度と言われている。
つまりそれ以下の金属粉であれば理論上はフィルターを通過して、エンジン内部を循環してしまう訳だ。
さらにフィルターにかかる圧力が規定以上であれば、バイパスバルブが開いてフィルターを介さずにオイルは循環する。
「おいおい、そりゃないだろう? 何のためのフィルターだよ!」思うユーザーもいるかもしれない。
けれどもこのバイパスバルブはフィルターを守るために組み込まれているのであり、フィルターがもし破れれば常にオイルはろ過されずに循環されることになるのだから、バイパスバルブの存在は重要だ。
通常であればバイパスバルブは冷間時にのみ開くことになり、大きな摩耗粉が循環することは限定的になる。
しかしオイル交換を怠れば、話は別だ。オイルフィルターのろ紙がスラッジ(オイル内の老廃物で詳しくは後述)で目詰まりしていると、バイパスバルブが開きっぱなしになって、汚れたオイルはろ過されずに循環することになってしまう。
そうなるとエンジン部品の摩耗によって発生した金属粉が部品間を循環して、それがまた摩耗の原因になってしまう。すると摩耗の進行速度は加速度的に高まっていくことになるのだ。
■スラッジの堆積が酷くなると思わぬトラブルを引き起こす!
汚れたオイルやオイルフィルターを使い続けると、摩耗が進んでしまうことは説明したが、それだけではなくオイル自身の劣化による他の影響も見過ごせない。
現代のエンジンオイルは冷間時から高温時まで安定した潤滑ができるように粘度が広範囲に安定するマルチグレードオイルを使っている。
さらに摩擦を軽減させたり、前述の清浄・分散性を確保するためにいくつもの添加剤が使われている。
オイルが新しいうちは、こうした添加剤が効果を発揮してくれるが、使っているうちに酸化や劣化が進み本来の性能から低下していく。
さらにエンジンの燃焼によって発生するカーボンや未燃焼ガス、燃焼ガスの吹き抜け分などにより、オイルは劣化していく。それらが添加剤の劣化と混ざり合ってスラッジを形成して、エンジン内部に堆積してしまうのだ。
シリンダーヘッドやオイルパンにスラッジが堆積してしまうと、それにより油圧系統に不具合が起こってオイルがエンジン全体に充分に送られなくなってしまうケースも起こりうる。
そうなればエンジンは潤滑不良を起こし、最悪の場合は焼き付き、ブローしてしまう。
インターネットで検索すれば、まるでヘドロのようにエンジン内部でスラッジが堆積しており、それを取り除く様子を見つけることもできる。こうなってしまうと、エンジンを完全に分解して洗浄するしか、回復させる手段はない。
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