かつての日産「901運動」から生まれ、名車の誉れが高いR32スカイラインの後継モデルとなったR33スカイラインは不遇のスカイラインだ。果たしてR33の真実とはどのようなものだったのか、元オーナーとして解き明かしてみたい。
文:ベストカーWeb編集部・渡邊龍生/写真:日産、ベストカー編集部
■R33スカイラインは不遇のイメージが色濃く……
歴代スカイラインのなかで「不遇」のイメージがつきまとうのがR33型9代目スカイライン。何せ、その前のR32型8代目スカイラインが歴代屈指の名車と評価されているのだから……。
1996年当時、私はR32スカイライン2ドアクーペGTS-tタイプM(1992年式)に乗っていたのだが、同年にビッグマイチェンを受けた後期型R33スカイライン2ドアクーペGTS25tタイプM(1996年式)に乗り換えた。今考えると確かにR32ほどのパンチ力は感じさせなかったものの、いいクルマだったのだ。
そもそも登場した1993年当時はかなりの熱気をもってそのフルモデルチェンジが注目を浴びていた。まあ、大きく期待されていたから余計にその評価が不当に低くなっているような気がしてならない。
そのボディサイズはR32からかなりアップ。クーペはR32時代の全長4530×全幅1695×全高1325mm、ホイールベース2615mmから全長4640×全幅1720×全高1340mm、ホイールベース2720mmという全車3ナンバーサイズに。車重もR32の1320kgから増加して1370kgになり、完全にひと回り以上大きくなっていた。
■時代を先取りしすぎた?「リニアチャージコンセプト」ターボ
実はR33の開発当初、クーペはショートホイールベース化されてセダンとは別になる予定だったが、コストの関係からセダンと共有化されているのはよく知られているところ。エンジンはR32の途中から追加されたRB25系が中心になっていた。
このR33スカイラインセダンとクーペのトップグレードGTS25tタイプMに採用された直6ターボ、RB25DET(5MT車280ps/30.0kgm、4AT車245ps/28.0kgm)は、あたかも大排気量NAのようなフィーリングを目指し、過給圧を控えめにしてターボラグをなくす「リニアチャージコンセプト」を採用していた。
今、考えてみると低速からトルクが立ち上がり、大排気量NAのようなレスポンスのよさと使いやすさは現在の省排気量ターボエンジンのさきがけ。R32タイプMが積むRB20DET(215ps/27.5kgm)から乗り替えたばかりの頃は「踏み込んでも“シュパーン!”と加速するターボらしさがないんだよなあ……」と疑問に思っていたものだ。
同じリニアチャージコンセプトを採用していた直4の2Lターボ、SR20DETを搭載していたS14シルビアK´s(220ps/28.0kgmのSR20DET搭載)も当時、S13シルビアオーナーたちからR33と同様の指摘を受けていたのも頷ける話だ。
■R33ならではのよさはもっと評価されるべき!
個人的にR33前期型デビュー時のスタイリングは個人的にちょっとおとなしすぎると思っていたが、その後の改良で徐々に変わっていく。
まず、1995年の改良でクーペタイプMのリアスポイラーがボディ一体型から大型化され、セダンもラジエターグリルやヘッドライト回りのカラーをスモークシルバーに変更するなど精悍な印象に。
さらに翌1996年のマイチェンではクーペのフロントマスクがガラリと一変。フロントグリルの形状が桟のない形状になり、ヘッドライト形状もR32に近いシャープなデザインを採用し、開口部が拡大したフロントバンパーの左右両脇には丸型2灯のウインカーランプとフォグランプを備えたスポーティな外観になったのだ。
1996年のマイチェンでフロントマスクが精悍に変わったことで気に入り、R32から買い換えた。当初はR33の乗り味を疑問に思っていたのだが、乗り込むうちにR33ならではの美点もあり、2ドアクーペでも大人が足を組んで座れる後席の広さ、重量のあるバッテリーをわざわざトランクルームに設置するこだわりのレイアウトを採用していたことなどはR33なればこそのメリット。
サイズアップしたボディでも身のこなしは充分だったし、その分、高速でのスタビリティの高さもよかった。ホイールベース延長の効果で高速安定性もR32よりも向上。元オーナーとして、その評価の低さを「こんなによかったのに」と残念に思っている……。
【画像ギャラリー】評価低めのR33スカイラインは実は意外にも走りの実力は高かったのだ(13枚)画像ギャラリー
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