■5ナンバーサイズのちんまりしたボディに顔だけが洋風に
21世紀に入ると、国産おっさんセダンの凋落が激しくなる。かといって、斬新なデザインにするとおっさんに受け入れられないため、おっさんセダンはおっさんのままジリ貧となった。
そんななか、究極の開き直りを見せたのが、2007年に登場したプレミオ/アリオン(最終モデル)だ。なかでもプレミオは、クラウンの下に長年鎮座したコロナ直系ということもあり、登場当初は、ゼロクラウン風のヘッドライトを持つミニクラウン的なルックスで登場。その時代錯誤感が、カーマニアの涙を誘った。
2016年のマイナーチェンジでは、ショボかったルックスが一新され、ゴージャス系に変身。メッキを多用した立派なフロントグリルは、クラウンというよりドイツ車的に。
でも体つきは相変わらず短足胴長の5ナンバーサイズで、その虚勢を張りまくった雰囲気は、昭和の家具調テレビの伝統を正しく受け継いでいた。消滅から2年を経た今、プレミオの中古車がアジア圏で大人気と聞き、目頭が熱くなる。
そして、国産おっさんセダンの掉尾を飾ったのが、ホンダ レジェンドだ。北米メインの国際商品なのにB級デザインという例は稀有! ある意味国宝である。
2015年の登場時のフロントグリルも、メッキの化け物のようで凄まじかったが、2018年のマイナーチェンジでお顔がカラス天狗に変身。時空を超えたB級デザインぶりは、他の追随を許さなかった。
その最終レジェンドも、ウルトラ販売不振によって2年前に消滅。おっさんセダンの絶対王者たるクラウンもクロスオーバー化した。
こうしてB級デザインのおっさんセダンは、この世から絶滅したのである。いま街で見かけたら、もれなく駆け寄って抱き付きたいでちゅ~っ!
【番外コラム】私がブサイクカーを愛するわけ
筆者がクルマに興味を持つようになったのは、幼稚園時代に見た『西部警察』がキッカケだ。幼稚園児ゆえストーリーはまったく理解していなかったが、今でも語り継がれるほどのド派手なカーアクションが、幼少期の筆者の脳裏にこびりついたのである。
ただ、私の脳裏にこびりついたのは、スーパーZでもマシンRS軍団でもなく(これらももちろん印象的ではあったが)、その背後でドッカンドッカン横転爆発炎上を繰り広げる、型落ちのサエないセダンたちだったのだ。
当時、爆発の憂き目にあっていたのは230~330型のセドリック/グロリアで、タクシー上がりの低グレードがベースだったため、多くは丸目4灯のブサイクフェイス仕様だった。
しかしなぜか足元にはバチバチのエンケイアルミホイールが備わっており、そのアンバランスさも興奮に拍車をかけることとなったのは言うまでもない。
結局、幼少期の原体験というのは罪なもので、その後、無事運転免許を取得した筆者は、王道の車種よりも、スキマでニッチな車種を愛でるようになってしまった。
王道車が素晴らしいことは百も承知だが、ブサイクな脇役車にも愛嬌があり、長く接していると不思議と愛着が湧くもの。ということで先日ずんぐりむっくりカーのプジョー207SWを新たな愛車に迎え入れたばかりなのだ。
(TEXT/小鮒康一)
【画像ギャラリー】見れば見るほどぶちゃいく! でも愛おしい!! 懐かしのB級デザインセダン(24枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方昭和のB級カー雑誌ベストカーらしい記事で和みます。
スズキのキザシ、SX4セダンもわりとブサカワな車でしたよね。