カーメンテナンスの中でも、基本中の基本である「オイル交換」。ただ昨今は、エンジン自体の耐久性に加えて、エンジンオイルの耐久性も向上していることで、オイルの消耗や劣化のスピードが抑えられており、以前よりも交換サイクルが長くなった。そのためか、専門店でオイル交換を勧められても、「いまじゃなくていいや」と、交換タイミングをどんどん引き延ばしているクルマユーザーも少なくないようだ。
では、オイル交換をやらないとどうなるのか。自動車メーカーのエンジン設計エンジニアに取材してきた。
文:吉川賢一
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写真:Adobe Stock、写真AC
以前と比べて、2倍以上も長くなった
エンジンオイルの交換タイミングについては、一般的なガソリン車では15,000kmまたは1年ごと、軽自動車やターボなどの過給機付きエンジンでは5,000kmもしくは半年、ディーゼルエンジン車は10,000kmもしくは1年、というのが、自動車メーカーやJAFが推奨しているタイミングだ。ただ、1990年代や2000年代前半頃までは「5000kmごと」と推奨されていた。当時と比べると、現在は2倍以上もオイル交換サイクルは延びていることになる。
その理由は、冒頭でも触れたように、エンジン本体の性能向上や、オイルの耐久性が向上したため。2000年以降、急速に高まった環境保護の観点から、できるだけ廃油を減らそうとオイル性能の改善がなされたことで実現したことだ。ハイブリッド車は、走行中やアイドリング時にエンジンストップするエンジンオイル自体が汚れにくいため、さらに交換サイクルは長くなる。
オイル交換をしなくてもしばらくは走行可能 しかしある日突然、動かなくなる
しかし実際には、推奨タイミングで交換することなく、問題なく走り続けている人はいるだろう。では、オイル交換をせずに、3万キロ、4万キロ、5万キロとクルマを使い続けるとどうなっていくのか。エンジン設計を担当していたエンジニア数名にインタビューをした。
まず、推奨される15,000kmごと、もしくは1年ごとのオイル交換のタイミングについては、「この距離を過ぎても、直ちにエンジン性能に影響が及ぶことはない」という。オイルの汚れ具合は、走行距離だけでは判断ができず、同じ走行距離であっても、短距離移動だけに使われていたクルマと、仕事で毎日長距離の運転をしているようなクルマでは、コンディションはばらばら。またドライバーの運転操作のクセや、走行場所、季節、地域などによってもオイルの汚れ具合は異なるため、悪い条件が重なった場合でもエンジンに不具合が生じないよう、マージン(余裕)を大きめにとった値が推奨タイミングとされている数値であり、これを少しくらい超えたからといって、直ちに不具合が発生することはないそう。
また、よくクルマ好きがいう「オイル交換をすると走りがよくなる」という点についても、(燃費性能は多少よくなることもあるが)技術的根拠はないという。街のカー用品店などでみられる、クルマの年式や車種を分けずに(エンジンオイルの交換時期を)「3,000〜5,000km」としていまだに販売しているのは、「ちょっとおかしい」と思っていいそうだ。
そして、そのままオイル交換をせずに走り続けたとしても、音や振動は徐々に大きくなっていくが、しばらくは走ることは可能だという。ただし、エンジンオイルは徐々に性能劣化し、潤滑や冷却といった役割を徐々に果たせなくなっていき、オイルスラッジと呼ばれる汚れがエンジン内部で蓄積、あるタイミングで焼きつきを伴って動作不良となり、最終的にはアイドリング不調や煙を吹きエンジンは停止にいたるという。使い方にもよるが、オイル無交換、無補充で10万キロを超えるとこのような事態に陥ってしまうそうだ。
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