エントリー価格が1000万円を超え、完全に富裕層向けのクルマとなったポルシェ 911。だからなのか、GT3 RSなどのスペシャルなモデルが続々と登場している。ここで紹介するラリーレイド仕様の「911ダカール」もそんな一台だ!!
※本稿は2024年2月のものです
文/鈴木直也、写真/平野 陽、PORSCHE
初出:『ベストカー』2024年3月26日号
■もはやふつうのサラリーマンには縁のないクルマ!?
最近のポルシェ911はエントリー約1600万円から。もはやふつうのサラリーマンが頑張って買える価格じゃない。
この価格レンジになると、買える層にとってはあと1000万円上がってもあまり影響がない。さらなる価格エスカレーションを呼んで、GT3 RSなどの“役物”が引っ張りだこになっている。
で、その役物911の最新作が、今回試乗した“911ダカール”である。
その名のとおり、今度のテーマはラリーレイド仕様。車高を上げてオフロードタイヤのピレリ・スコーピオンを履くのみならず、ご丁寧にもかつてパリダカで優勝した911カレラ3.3よろしく、白と紺のロスマンズカラー風にペイントされている。
オプションのロールケージなどを含む車両価格は約3600万円だ。
■驚くべき精緻な運転感覚!
この911ダカール、試乗する前は正直いって「ポルシェもついにネタに走ったか?」とも思ったのだが、乗ってビックリ。少なくとも公道ではGT3 RSよりよっぽどエキサイティングなリアルスポーツなのだ。
その最大の魅力は、ドライバーがコントロールしているという実感(それが多分に幻想であったとしても)を味わえるところだろう。
パワートレーンはカレラGTSと同様で、水平対向3Lターボ(480ps/58.1kgm)に8速PDKのAWD。相変わらず切れ味最高で気持ちのいいエンジンだがパフォーマンス的には特段スペシャルではない。
ところが、剛性のカタマリみたいなボディにストローク豊かでビシッと引き締まったラリーサスが組み合わされるとクルマのキャラクターがガラッと一変する。
農道みたいな狭くうねった道。そんなシチュエーションではGT3 RSはもちろん、普通のカレラGTSだって飛ばそうなんて気は1ミリも起きない。
ところが、911ダカールだとぜんぜんOK。クルマのサイズがひと昔前の996時代に戻ったようにコンパクトに感じられ、なんだか自由自在に振り回せ(そうな気にさせられ)るのだ。
つまり、GT3 RSのテーマがサーキットにおけるベストパフォーマンスとするなら、ダカールはオフロードを含むあらゆる公道向けに妥協なきクルマ造りが行われているってこと。さすがポルシェ、3000万円分の価値はしっかりと造り込まれている。脱帽だ。
●ポルシェ911ダカール主要諸元
・全長:4530mm
・全幅:1864mm
・全高:1338mm
・ホイールベース:2450mm
・最低地上高:161mm(191mm)※カッコ内はhighモード時
・アプローチアングル:14.2°(16.1°)※カッコ内はhighモード時
・デパーチャーアングル:16.4°(18.2°)※カッコ内はhighモード時
・ブレークオーバーアングル:16.2°(19.0°)※カッコ内はhighモード時
・車両重量:1680kg
・エンジン:水平対向6気筒DOHCターボ
・総排気量:2981cc
・最高出力:480ps/6500rpm
・最大トルク:58.1kgm/2300-5000rpm
・トランスミッション:8速PDK
・WLTCモード燃費:―
・Fサスペンション:ストラット
・Rサスペンション:マルチリンク
・タイヤサイズ:F=245/45ZR19 R=295/40ZR20
・車両価格:3099万円(オプション含まず)
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