2024年4月から、一般ドライバーが自家用車を使い、有料で顧客を運ぶ「日本版ライドシェア」が、条件付きで許可される。3月13日に国土交通省が示した内容によると、実施予定区域は東京都内や神奈川県内など計4カ所。運賃はタクシー並みで、発着地とともに事前に確定、それぞれの地区でタクシーが不足する時間帯に限り、許可されるという。
現在のタクシードライバー不足は深刻。地方では、タクシー会社に電話をしても、「予約でいっぱい」「いけるのは3時間後」といわれることがある。そう考えると、ライドシェアの導入は歓迎されていいように思うが、導入には賛否両論がある。日本版ライドシェア導入による「利点」と「懸念」について考えたい。
文:吉川賢一
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写真:Adobe Stock、写真AC、内閣府
海外で急速に普及するライドシェア
今回、条件付きで許可された実施予定区域は、下記の4か所だ。
・東京都23区と武蔵野市、三鷹市
・神奈川県横浜市や川崎市など
・愛知県名古屋市や瀬戸市など
・京都府京都市や宇治市など
「ライドシェア」とは、一台のクルマに、目的地が同じ他の利用者と相乗りして移動する仕組みのこと。海外では急速に普及しているシェアリングサービスのひとつだ。
通勤時間帯や公共交通機関が止まった際、また観光地などで利用できるクルマが増えることは、利用する側にとって大きなメリットだし、相乗りによってマイカー利用を減らすことできれば、CO2排出量の削減にも貢献できる。場合によっては、人と人とのコミュニケーションの場となることも考えられるだろう。ドライバーからみても、自家用車を有効活用することができるし、空いた時間で働くことができるなど、メリットは多い。
ただ、ライドシェアには、利用者側ドライバー側双方に「相手を選べない」という懸念がある。知らない人と狭い車内で限られた人数が時間を過ごすことは、犯罪に巻き込まれる懸念もあるし、衛生面も気になる。そこまでではなくても、態度が悪いとかで嫌な思いを強いられることは、大いに考えられることだ。
これら懸念に対応するため、海外のライドシェアサービスでは、多くが「相互レビュー」を導入している。乗客と運転者がお互いをレビュー(評価)しあうことで、マッチング前に相手側の情報を把握できるため、安心して利用することができるようになっている。もちろん車内カメラなどで社内の様子を残すことも必須だが、利用客と運転者がお互いを選ぶことができれば、評価の低い運転者や利用客は、自然と淘汰されるので、相互の「質」が向上するという意見もある。また、ドライバーや相乗り者と「おしゃべりしたくない」とか、「静かに移動したい」というのも、選択できるようになるかもしれない。
ドライバー不足緩和のほか、事故率低減にも効果が期待される
日本では長年、ライドシェア導入に慎重な姿勢をとってきた。そもそも日本では、営業許可がない個人によるタクシー行為(いわゆる白タク)は、「一般旅客自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならない」とする道路運送法第4条に違反することとなり、自家用車は原則、有償で運送の用に供してはならない(道路運送法第78条)。
ただ昨今、タクシー・ハイヤー業界は深刻なドライバー不足に陥っている。統計によると、2010年から12年間でタクシーの運転手は約40%、14万9000人も減少しており、有効求人倍率は4.13倍と極めて高い。ドライバーの高齢化も進んでおり、年齢構成比では70歳から74歳が最大のボリュームゾーンとなっている。
交通事故率も、タクシー・ハイヤーは普通乗用車と比べて1.5倍も高く、事故当時者の平均年齢も62.7歳と高い傾向にある。高齢だとしても優れたタクシードライバーはたくさんいるが、やはり高齢ドライバーと事故率の関係は否定できない。ライドシェアの導入によって、副業や兼業として、比較的年齢の若い運転手が増えれば、ドライバー不足に対応できることはもちろんのこと、事故率低減にも繋がることが考えられる。
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