日米のメディアでひっそりと「アップルが電気自動車事業から撤退」という報道がなされている。スティーブ・ジョブス存命時からの悲願であったEV生産はついに幻のまま終焉を迎えるとみられる。そして我が国のソニーホンダのEVも最近耳にしないが一体なにがあったのか?
※本稿は2024年3月のものです
文/国沢光宏、写真/Tesla、ベストカー編集部、AdobeStock(トップ画像=hanohiki@AdobeStock)
初出:『ベストカー』2024年4月26日号
■アップルカーはとうとう姿を見せずに終焉?
アメリカのブルームバーグが「アップルは電気自動車ビジネスを断念した」と報じ、日本でもNHKがこのニュースを取り上げた。米ウォールストリートジャーナルまで取り上げているから間違いないのだろう……というか自動車関連の情報では私らのほうが詳しかったりする。
改めてアップルカーについて説明しておく。私のブログで最初に取り上げたのは2015年2月。そこから追いかけており、2021年3月に最新情報をベストカーWebで出している。概要をまとめると以下のとおり。
「そもそもアップルカーとは何か? 発端はアップルの創始者であるクルマ好きのスティーブ・ジョブスが立ち上げた“タイタン”という自動運転プロジェクトだ。当時、グーグルやウーバーなどが自動運転に注力しており、アップルも2021年に実用化したいとブチ上げた」
「その後、タイタンに目立った動きなし。スティーブ・ジョブス亡き後、プロジェクトは自然解散したのかと思っていたら、突如2020年あたりからクルマを作るという話になる。もちろん、自社で開発&生産などできないから、自動車メーカーに委託する」という流れ。
■目指したのはテスラ?
今やゼロから自動車メーカーを興すことなど不可能に近い。テスラも技術者は自動車メーカーから集め、トヨタからタダみたいな価格で譲ってもらった居抜きの工場で生産を開始した。
アップルが考えていたのは企画と販売をアップルで行い、クルマの開発や生産は丸投げするもの。ここまで読んで「どこかで聞いた話だね」と思うかもしれない。ソニーホンダです。
ソニーがホンダに指示を出し、ホンダが「承知しました」と開発し、ホンダの工場で生産してソニーのブランドイメージで売るという戦略。ソニーの魅力と技術を上乗せすることでホンダブランドだと500万円のクルマを1000万円で売ろうという目論見。
アップルカーと似ている。違いは価格帯。アップルカーはiPhoneを買うような幅広い顧客を狙った。ではどのメーカーがアップルカーを請け負うのかと盛り上がった。
■すでに2023年春の時点でほぼ破綻していた?
アップル、どうやらホンダや日産、トヨタにも話を持ち込んだようだ。面白いことにトヨタとホンダは一蹴した模様。iPhoneを見ればわかります。
iPhone、部品は買い叩かれ、労働コストの低い国で作る。大もうけするのはアップルだけ。アップルはクルマもiPhoneと同じような商品にしたかったし、実現できると考えたようだ。
ところがどっこい! 自動車メーカーからすればアップルの考えなど見え見え。トヨタとホンダが一蹴したのは当然だ。「検討します」と返事した厳しい業績のメーカーもあったようだけれど、最終的にすべて「ノー」となる。
中国や韓国のサムスンなども候補に上がったが、これまたまとまらず。「だったら破綻しそうなメーカーを買収して自社開発だ」みたいなことも考えたそうだけれど、2024年に発売というスケジュールは延び延びになってしまう。ギョウカイの噂話だと、2023年春の時点で「打つ手なし」だったらしい。
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