バブル崩壊後から、日本で消費されるものは実用性が高く評価され、「ムダを楽しむ」ということが少なくなった。社会に受け入れられず、良いモノなのに評価されなかったというケースは数多くあり、今回紹介するのはそんなクルマ。お洒落なスペシャリティカーであり、実は本格的なスポーティクーペ、トヨタ・カレンを堪能せよ!
文:佐々木 亘/写真:ベストカーWeb編集部
■え?姉妹車って本当?個性が爆発なクルマ
実はT200系セリカの姉妹車として登場したカレン。各所に共用部品が存在するが、フロントマスクが大きく違うことで、姉妹関係とわからない人も多いかもしれない。
ゴリゴリのターボ4WDだったセリカに対して、カレンはNAエンジンを積んだFFである。本格的なスポーツ走行を楽しむというよりも、日常使いでカッコいいスペシャリティクーペを意識していた。
ヘッドライトは薄型ワイドな3連コンビ。薄型グリルとマッチして、切れ長の瞳が妖艶さを醸し出す。リアフェイスはダックテールでシンプルかつスポーティ。前後でここまで大きく印象が変わるクルマは、あまり見たことが無い。
カレンのデザインで、最も秀逸なのがボンネットのプレスラインだと思う。目頭からフェンダーにかけて続くプレスラインが、フェンダーラインのボリューム感にもつながっている。
この2本のラインがあることで、クルマ全体が伸びやかでふくよかな印象になるのだ。FFモデルであるが、フェンダーのボリュームが比較的大きいため、パッと見た形でFRクーペを想起させるのも、カレンの特徴であろう。
■実はあのクルマはカレンから生まれた!?
相反する2つの要素を、上手く調和させて個性を高めるカレン。この手法は、レクサスのブランドステートメントの中にも出てくる「二律双生」と同じだ。
日本国内にレクサスが導入されるよりはるか昔に、カレンの中でレクサスの本質が生まれていたということか。
1代限りで幕を下ろし、マイナー車的な扱いを受けているカレンだが、その存在が今日のトヨタ・レクサスに与えた影響は、計り知れない。
■外と中、作り出された対比はこれまた見事
艶やかなエクステリアデザインとは反対に、インテリアは直球スポーティだ。インパネデザインこそ、曲面構成で美しさを感じるものの、ステアリング・シート・シフトレバーなど、ドライバーの触れるところには、セリカと同等の剛健さが目立つ。
インパネ中央のエアコンやオーディオスイッチ類は、少しドライバーズシートの側へ向けられ、シフトレバーとパーキングブレーキは並行配置されている。
また、その身を委ねるのは、本格的なスポーツシートで、クッション調連動リアバーチカルアジャスターが付く。シートクッションを上下させる動きに連動して、シートクッションが前後して、適切な運転姿勢に導く装備だ。
シートリクライニングには、ダイヤルノブ操作の無段階調整機構と、レバー操作によるクイック機構を共存させているのも面白い。
心臓部には、高性能ツインカムエンジンを載せ、足回りにはデュアルモード4WSを搭載する念の入れようだ。見た目のエレガントさとは裏腹に、内装もエンジンも足回りも、本格的なスポーツ走行を望んでいるような作り込みがされている。
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