陸運業の労災というと、真っ先に浮かぶのが交通事故だと思いますが、それだけじゃないんですね。実は荷役作業中の事故が意外と多い。
陸上貨物運送事業労働災害防止協会(陸災防)がまとめた「令和6年における労働災害の発生状況について」(速報値)によると、死亡災害、死傷災害ともに前年に比べて増加しており、荷役作業中の死傷災害など陸運業における労働災害の状況は、依然として厳しい状況が続いています。
陸災防の広報誌「陸運と安全衛生」2025年2月号を元にその状況をお伝えします。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
図表/陸上貨物運送事業労働災害防止協会、写真/フルロード編集部
※出展 「陸運と安全衛生」2025年2月号
増加傾向が続く死亡災害、死傷災害

昨年の陸運業の労働災害発生状況は、死亡災害が97人で前年より1人増加、死傷災害が1万5029人で62人増加している。
ちなみに死亡災害とは人が亡くなった労働災害のこと。死傷災害とは死亡災害に休業4日以上の負傷を加えて合計した労働災害のことである。
死亡災害は令和5年に大幅増に転じているが、令和6年も高い水準で推移している。主な事故の型別は、「交通事故(道路)」が37人、「墜落・転落」が20人、「はさまれ・巻き込まれ」が12人、「飛来・落下」が10人となっている。
死亡災害のうち「交通事故」「墜落・転落」は前年に比べ減少したが、「はさまれ・巻き込まれ」は前年より3人増加、「飛来・落下」については7人増加している。
死亡災害の「はさまれ・巻き込まれ」の事故事例
事故の概要の一部を見てみると、
「ダンプトラックの荷台に上がろうとした際に当該車両が逸走し始めたため、前方に回り手で停車させようとしたが、逸走している当該車両と前方に停車していた別のダンプトラック後方に頭部が挟まった」。
「空コンテナを回収するためトラクタヘッドを運転し、コンテナが搭載された荷台に接続し運転席を離れたところ、突然当該車両が前進し始めたため、慌ててトラックの前面に回り込み止めようとしたものの、当該車両進行方向にあった別のトラックとの間に挟まれた」。
「トラクタヘッドとトレーラの連結作業中、運転席から降りてエアホースを接続していたところ、無人の当該車両が前進し始めたため、運転席に戻って制止しようとしたところ、車両右側面と壁との間に挟まれた」。
「5tトラックのタイヤを冬用タイヤからノーマルタイヤに交換するため、運転席側前輪を取り外した後、何らかの理由で車体の下に入ったところ、車体前方を支持していたジャッキが外れ、車体の下敷きになった」。
「大型トラック前輪のエアスプリングの修理をするため、作業員が運転席に設置されたリモコンでエアーサスペンションにエアーを送り、タイヤと車体との間隔を広げた後、被災者がタイヤと車体との隙間に上半身を入れ修理をしようとしていたところ、車体が急に下がり、被災者の頭部および頸部がタイヤと車体との間に挟まった」。
「ダンプトラックの荷台を上げて清掃作業を行なっていたところ、荷台が下がり泥除けとダンプトラックの右後輪との間に上半身が挟まれた」。
「冷蔵倉庫にトラックをバックで着け、ロールボックスパレットに積んだ荷(約200kg)を降ろしていたところ、ロールボックスパレットが倒れ下敷きとなった」。
といった内容で、逸走防止措置を講じていなかったことや、ジャッキおよびスタンド等を適切に使用していなかったことが原因で起きた災害のようである。