災害に強い物流とは!? スワップボディと中継輸送の可能性を探る

災害に強い物流とは!? スワップボディと中継輸送の可能性を探る

 能登半島地震からのは復旧・復興にはまだまだ時間がかかると見られるが、被災した方々が「普段の生活」を取り戻すには物流の役割が大きいと思う。

 政府は10月、物流の2024年問題に対する「政府の物流革新緊急パッケージ」を決定した。内容は①置き配ポイント還元、②モーダルシフトの拡大、③効率的な輸送(DX、EV化、自動運転)、④標準的な運賃、⑤トラックGメン……などだ。

 モーダルシフトや中継輸送など、大手の運送会社が利用できる方法に偏っているようにも見える。実運送の多くを担う中小ができる対応はあるのか? 併せて災害に強い物流、冗長性のある物流についても考えてみたい。

文/長野潤一、写真/「フルロード」編集部
2023年12月11日発行トラックマガジン「フルロード」第51号より

ドライバーのための施策が必要

トラックドライバーの拘束時間が長い要因として、荷待ち時間がある
トラックドライバーの拘束時間が長い要因として、荷待ち時間がある

 「2024年問題」は、本来はドライバーのための施策だが、今ひとつドライバーが喜べないものとなっている。

 その理由は、拘束時間の制限により自宅で過ごせる自由時間は少しばかり増えるものの、1日にできる仕事の本数が減って、給料の減少が予想されるからだ。

 物流DXとして最近導入され始めているアプリ受付やバース予約システムにしても、メリットは少なく、かえって手続きが面倒くさくなった側面もある。これらシステムはもっともっと進化していかなければならないだろう。

 また、高速道路での休憩場所不足も深刻で、パーキングエリアの大型車駐車枠を倍増しなければならないのではないかと感じる。

 駐車枠不足の原因は、高速道路の「深夜割引」だけではなく、一般道に下りても駐車する場所が無いことにあり、一般道でのトラックステーションの増設や、全国各地にある工業団地でのトラック待機場所設置の義務化も必要であろう。

スワップボディと切り回し

 ドライバーが長時間労働になる理由は、主に「荷待ち」と長距離輸送などでの「長い運転」がある。

 工場などではトラックがスタンバイしていて、製品ができ上がり次第すぐに積んで運ぶ。トラック以外でも、観光バスは乗客が観光をしている間は待ち時間であるし、タクシーでも駅に着けて待つ。

 古くは、江戸時代の信書を伝達する飛脚や、帆船の風待ち港も同じだ。運送業には元来、相手の都合や自然条件に合わせて「待つ」という性格があり、待ち時間は、いわば運送業の宿命ともいえる。

 しかしながら、荷物やトラックを貯めておける場所があれば、工夫をすることで、荷待ち時間を短縮することができる。降ろし待ちの多くは、着荷主の荷降ろしバース不足や、フォークマンの不足により発生する。

 政府の対策に盛り込まれた「トラックGメン」は、荷主の監視をするという。何か着荷主が「悪い」ように感じるが、実は、着荷主としても本当は困っている場合もある。

 つまり、ジャンジャン来るトラックの荷物を受付順にどんどん捌いていかなければならないので、急がない荷物でも先に来たら降ろさねばならず、倉庫内スペースが手狭になって作業効率が落ちることもあるのだ。

 そうした時に有効な手段のひとつが、スワップボディである。荷台をバースに着けたまま、荷台を残してトラックシャシーを分離できるので、ドライバーは荷降ろしをせずに、次の輸送に向かうことができる。

けん引免許不要で、トレーラのように荷台部の切り離しができるスワップボディ
けん引免許不要で、トレーラのように荷台部の切り離しができるスワップボディ

 ただし、専用車両の導入が必要で、高い運転技術も要する。着荷主側は、荷降ろし作業員を用意する必要があるが、荷降ろしの順序をコントロールすることができる。ウイングボディ等の既存の車種でも、荷待ち時間を短縮する方法がある。

 発荷主あるいは着荷主の事業所に、同じ運送会社で数台のトラックが入っている場合、積み降ろし専門のドライバーを常駐させ、トラックを切り回す方法である。

 長距離を走るドライバーは、空車のトラックで事業所に乗り付け、実車のトラックで長距離に出発すれば、待機時間が無くなる。当然、トラックは乗り回しとなるほか、積み降ろし専門の仕事が不人気になる可能性があるが、シフトで交代制にすればよい。

 トラックドライバーは、自分の走り方によって積み方も変えるという習慣がある。積み込みと走行の仕事を分割すると、貨物事故が発生した場合に誰の責任かという問題になる。標準的な積み込み方法のマニュアルづくりや、デジタコ、加速度センサーなどによる運転状況の可視化が必要になるだろう。

中継輸送

 中継輸送のメリットは、関東〜関西等の中間点で乗務員交代や荷台を交換した場合、毎日家に帰ることができることだ。東京〜九州のような超長距離では、ワンマン運行では中間で休息期間(8時間以上)を取る必要があるが、トラクタ交換等でリードタイムを短縮できる。

 「2024年問題」で最初に影響が出るのは、九州から東京に来る生鮮ではないだろうか。ツーマン運行という方法も考えられるが、生鮮輸送でツーマンはあまり聞いたことがない。

 車内のベッドでは振動や騒音があり熟睡できず、体力を消耗する。中継輸送のデメリットは、双方向から来たトラックが中間地点で荷台等を交換する場合、片方が渋滞等により遅延すると、両方の運行がその影響を受けること。

 また、毎日定刻に出発するような荷物でないと成立しにくい。中継地点の場所選定は、現状では運送会社の支店などで行なわれる場合が多い。

 しかし、支店が最短経路上のインターチェンジから離れていれば、時間的・経済的なロスとなる。高速道路のパーキングエリア等で中継を行なえればもっと効率的だが、高速道路の料金制度上、ヘッド単体で入口を通過し、台車を繋いで出口を通過するというようなことはできないため、一度高速道路から降りる必要がある。

「物流の2024年問題」を見据え期待のかかる中継輸送
「物流の2024年問題」を見据え期待のかかる中継輸送

 中継輸送を促進するために、新東名や伊勢湾岸道、新名神など幹線のインターチェンジから1〜2km程度のところに公共の中継地点を設置することが望まれる(現在、新東名下り浜松SAに隣接する「コネクトエリア浜松」がある)。

 また、長距離逓減制から料金が割高になったり、深夜割引が引き継げないことがある。高速料金にも中継輸送を前提とした制度が必要だ。

次ページは : 災害に強い物流体制に

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