「作業車」では内燃エンジンのメリットが大きい
こうした特装系の作業車、いわゆる「働くクルマ」を設計するにあたり最も重要なのは、搭載(架装)するそれぞれの機器がきちんと運用可能であることだ。
作業用の架装物は千差万別だが、基本的にPTO(パワー・テイクオフ)と呼ばれる機構を通じて、車両のパワートレーンから動力を取り出している。
水素燃焼エンジンなど、内燃機関のまま脱炭素を進めることのメリットの一つがPTOによる架装物への動力供給で、エンジン/トランスミッションから動力を取り出すので、従来の機器を同じように駆動できる。
車両を電動化した場合、架装物を電動化したり、あるいは車両に電動メカニカル式のPTOを追加するなどの対策が必要になる。
WaVeプロジェクトは、こうした用途に水素燃焼エンジンが適していることを証明することが目的であり、2台のプロトタイプは優れた例となった。水素駆動というコンセプトは、運転時や機器の駆動時、あるいはその両方を同時に行なうようなエンジン負荷が高い状態でも、確実な低排出を実現する。
ウニモグとクローラダンプの両方が、水素駆動用にコンバートされた中型エンジンを搭載している。ディーゼルエンジンからの変更点は、ピストンのカスタマイズと、吸気系を水素に対応させたこと、点火システムを水素に最適化したことなどだ。
水素を燃焼すると水が発生するが、排気管を通って高温の水蒸気が排出される。
ウニモグは圧力700barの気体の高圧水素を合計13kg搭載する。エンジン出力は290hp(1000Nm)で、馬力とトルクは300hp版のディーゼルエンジンとほぼ同等。多目的作業車であるウニモグは、アタッチメントを交換することで様々な作業に対応するが、プロトタイプでも実際の作業内容を開発に反映するため、多くのアタッチメントを試した。
クローラダンプもエンジンはほぼ同じだが、燃料タンクの容量は、700bar圧力で14.5kgとなる。ダンプベッセルの容量は16立方メートル、ペイロードは30トンだ。ボディは360度回転可能で、ドーザーブレードを備える。土木工事など不整地でのバルク輸送に活躍する車両だ。
【画像ギャラリー】WaVeプロジェクトの最終イベントで登場した「水素エンジン」のプロトタイプ車両を画像でチェック!(9枚)画像ギャラリー