2019年10月の新車販売台数を見ると、カローラをはじめ、N-BOX、スペーシア、タントといった人気軽自動車が1万台以上を販売している一方、実は100台以下しか売れていない車種も数多く存在する。
しかし、人気車とは対照的に販売台数でワースト5に入った車にも存在意義や魅力があるのが自動車の奥深さ。売れない車=悪い車ばかりではない。
そこで本稿では、10月の販売台数で残念ながらワースト5に入ってしまった不遇な車にスポットを当て、その意外な魅力を紹介。売れない理由についてもを合わせて考えてゆく。
文:永田恵一
写真:NISSAN、HONDA、編集部
登録車販売台数 最新のワースト5は?
OEM車を除く、2019年10月の登録車販売台数ワースト5は以下の通り。
1位:ホンダ NSX/0台
2位:日産 シーマ/7台
3位:ホンダ クラリティPHEV/8台
4位:日産 フーガ/19台
5位:トヨタ センチュリー/21台
(※NSXは、初年度の販売台数=日本で100台限定。これに加え8月にアメリカで発表された2020年モデルは、デリバリー開始が11月のため、現在日本向けに売る車がないためだろう)
ただ、NSXとセンチュリーは、価格が2000万円級ということも含めて特殊なモデルといえる。そのためこの2台を除き、ここからは3台+実質的に販売台数ワースト5といえる計5台を紹介し、売れない理由を考察していく。
【1位】日産 シーマ/7台
1988年に登場し、流行語にもなった「シーマ現象」で一世を風靡したシーマは、世代を重ねるごとに販売が低迷し、2010年に一度絶版となった。
しかし、2012年にフーガの輸出仕様(Q70)にあるロングボディに、1モーター+7速ATの3.5Lハイブリッドを搭載するハイブリッド専用車として復活した。
現行シーマは、運転すると日本の速度域に合ったいい意味での緩さがあり、なかなか快適な車だ。
また、ロングボディということもあり、ショーファードリブンとして見ても、後席の広さや装備は申し分ない。800万~900万円という価格も、言葉は悪いが「法人が買う安めのリムジン」と考えれば納得できる。
それでも10月に7台しか売れなかったのは、トヨタ/レクサスに対し、日産のセダンのイメージがあまりに薄くなってしまったことに尽きる。
(編注:なお先日、一部で「日本向け生産終了」という報道が飛び交ったが、こちらは間違いで、今後も作り続けられるし、販売し続けられる。シーマ、がんばってほしい!)
【2位】ホンダ クラリティPHEV/8台
2018年に登場したクラリティPHEVは、1.5Lエンジン+2モーターのシリーズハイブリッド(巡航中のエンジン直結モード付)に17.0kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載するプラグインハイブリッド車。それだけにEV走行距離はWLTCモードで101kmと長い。
乗れば静かかつ乗り心地も良く快適で、動力性能も充分。ハイブリッド走行での燃費も20km/Lは確実なため、燃料タンクは26Lと小さいものの、EV走行距離も含めれば航続距離も問題なく、クルマ自体は申し分ない。
しかし、日本人にはクセを感じるスタイル以上に、米国仕様の上級グレードが3万6600ドル(1ドル109円換算で約399万円)なのに対し、日本仕様の598万9500円という価格は致命的に高い。これでは20万円の政府からの補助金も焼け石に水だ。
クラリティPHEVは、もともと年間の販売計画が1000台と少ないが、いずれにしても米国並みに価格を下げない限り浮上は望めず、このままでは短命に終わりそうだ。
コメント
コメントの使い方