軽自動車を日常の足車からモータースポーツを楽しむホットハッチへと変えたのは間違いなくアルトワークスの功績だ。初代モデルから本気のスポーツ走行ができる軽自動車として5世代にわたり進化を続けてきた。そんな自らの走りを塗り替え続けてきたアルトワークスは、一体どこまで進化したのか。1998年に登場した4代目モデルを振り返る。
文/佐々木 亘:写真/ベストカーWeb編集部・スズキ
【画像ギャラリー】スズキの魂が乗った最高の1台!! 現行モデルもカッコイイから見ていってよ!!(7枚)画像ギャラリー信じられない心臓がワークスに入った
まずはエンジンから。目玉はRS/Zの5MT車に搭載された、K6A型オールアルミEPI DOHC12バルブVVTインタークーラーターボエンジンだ。
可変バルタイを搭載し、低回転時にはトルク重視の力強さを発揮して、高回転時にはバルブタイミングを遅らせることで吸気の充填効率を高めて高出力を実現する。最高出力は64PS、最大トルクは11.0kgmだった。
しかし4ATモデルも負けてはいない。こちらにはK6A型オールアルミEPI DOHC12バルブインタークーラーターボエンジンを搭載する。可変バルタイこそ搭載していないが、シリンダーに圧入セミウェットライナーを採用して、高い冷却性能と信頼性を獲得。
シリンダーヘッドやカムシャフト、ピストンの構造・精度を見直して、低・中回転域でのトルクをさらに向上させている。
また、アイドリング回転数を低く設定するといったATならではのセッティングを図り、燃費向上にも貢献している。最高出力は64PSとVVTエンジンと同じ値で、最大トルクは10.8kgmだった。
これに加えて、電子制御スロットルやダイレクトイグニッションシステムを採用。ターボの威力を効果的に発揮させる、大型インタークーラーや水冷式オイルクーラー、イリジウムスパークプラグの採用など、心臓部に一切の妥協はない。
ボディは強くて軽いものを徹底して作り上げた
面白いほど回るエンジンなのだが、静かで振動が少ない。これもアルトワークスのこだわりだ。
ボディ各部の制振材や遮音材の配置を最適化し、エンジンマウントを見直した。振動の伝わりにくい部分を指示する、慣性主軸式の3点マウント方式を採用している。また電気式スピードメーターの採用で、室内へのノイズ伝達を防ぎ、部材結合部の剛性を高めて振動伝達を抑えていたのだ。
また、ボディでは大型化による車両重量増をいかに抑えるかも、4代目アルトワークスの大きなテーマだったが、エンジンマウントの方式を変更したことで、サブフレームやセンターメンバーを廃止できた。
さらにミッションの軽量化やキャビン内のフルトリム化などを行い、大きくなっても先代同等に迫る軽量化を実現している。
気持ちよいドライビングのための基本性能を揃える
超カッコいいシルバーメーターにフルバケシート、スポーツサスと専用ショックアブソーバー、14インチ55扁平の左右非対称タイヤであるアドバンネオバを採用するなど、各所の装備にも抜かりはない。
またFFの5MT車にはヘリカルLSDを採用し、走りのモデルはコチラだと言わんばかりなのだが、四駆にはロータリーブレードカップリング式フルタイム4WDを採用した。FFの心地よさか、四駆の安定感か、このあたりは結構好みが分かれたものだ。
さらにボディのワイド化によってペダル位置を先代よりシートに正対した位置に設定できた。電動パワステの制御方法も見直し、操舵フィールを大幅に向上させた点にも注目したい。
当時、スポーツモデルは需要縮小傾向にあったものの、ここまで細部にこだわり本気でサーキットを攻め込める仕様にしてきたスズキには感服。販売不振により約2年で姿を消した短命なアルトワークスなのだが、そのこだわりの深さは、まさに最終形態である。
そんな熟成の4代目アルトワークスは、中古車のタマ数が多い。価格もこなれていて30万円台からあるのが良いところだ。人気はイマイチだったが走りはピカイチの4代目。気持ちのいい軽自動車を探しているなら、コレを選ぶしかないぞ。
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