いつの時代も軽自動車市場を牽引する存在のアルト。その中でも軽自動車の価値観を変えたと言われる、スパルタンなスポーツモデルがあった。その名もアルトワークスだ。8代目モデルで復活を果たしたが、現在はまたフェードアウトしたままの名車である。そんなアルトワークスの中でも、独立車種として登場したポパイアルトワークスを振り返っていこう。
文:佐々木 亘/画像:スズキ、ベストカーweb編集部
【画像ギャラリー】名車中の名車だよなぁ!! アルトワークスを振り返っていこう(11枚)画像ギャラリーワークスの礎を築いた丸目のアイツ
1988年の3代目アルトの登場と同時に現れたのが、アルトワークスだ。標準モデルのアルトとは大きく違う、丸目2灯のエクステリアデザインは、「めかしたスポーツギア」と称された。
初代ではグレードの一つであったワークスだが、当代から源流のアルトとは別の道を歩むクルマとなっている。カタログやプロモーションも、アルトとは完全に別に作られ、以降のアルトワークスのための礎を築いた存在だ。
ボディサイズは全長3,195mm×全幅1,395mm×全高1,375~1,385mmで、ホイールベースは2,335mm、車両重量は620~630㎏と現在の軽ホットハッチモデルを考えても、かなり軽量だったことが分かる。
搭載されたエンジンはF5B型。上級グレードには水冷4サイクルの直列3気筒DOHC12バルブインタークーラーターボ、下位グレードにはSOHC6バルブのエンジンが搭載されている。総排気量は547㏄だが、DOHCモデルでは最高出力64PSを叩き出した。胸のすく加速は、ちょっと怖いくらいものだった。
これで車両本体価格は89万8000円からと、なんと良心的なことか。物価や通貨価値は現代と異なるが、多くの人が無理せず手にすることができるスポーツモデルとして、幅広いユーザーニーズに応えた一台だ。
走るための本気の室内装備がワークスの証
アルトワークスのドライバーズシートに収まると、コクピットという言葉がよく似合う。
今でも軽自動車としては装備の少ない、テレスコ付チルトステアリングを装備し、正確なペダルワークができるようにノンスリップペダルを採用した。バケットシートはちょっと面白い形をした仕様で、ショルダーサポートを取り外しできるという代物だ。
シートが車体中央に寄せて取り付けられ、コーナリング時には自分を中心にしてクルマが回頭していくように感じられるドライブフィールは、さながらゴーカートのようでもあった。
豪華なわけではないが、必要なところにしっかりとお金をかけるのは、スズキらしさとも言える。いつまでもドライブしていたくなる軽自動車を、35年以上も前に作り上げているのだから、スズキの熱意とその技術には、頭が下がるばかりだ。
カタログも見ていて超面白い
ポパイとオリーブが描かれた当時のカタログには面白コピーが多く、読んでいて飽きないのもアルトワークスの魅力の一つ。
「1週間に8日乗りたい。」「生まれついての、エンターティナー。」「君が乗れば、メイクアップドライビング」といった、スズキ節が光る。特に「1週間で8日乗りたい」のコピーは、アルトワークスの虜になるユーザー心理を上手く表現しており、昭和最後の名コピーと言えるのではないだろうか。
インテリア紹介のページでは、「部屋より、ワークスで過ごす時間が長くなった。」というピッタリな紹介文もあり、カタログ作りにも時間とお金と多くの人のアイディアが詰め込まれていることがよくわかる。
スズキのホットハッチであるスイフトスポーツは、ZC33Sファイナルエディションが登場し、幕引きとの見方も多く、現行型アルトにワークスの設定は無い。快適乗用車ソリオやスペーシア、ジムニーなど元気なモデルは多いものの、やっぱりスズキにはホットハッチを作り続けてもらいたいぞ。
現行型アルトは登場から今年で4年目。マイナーチェンジと共に、アルトワークス復活なんていう驚きがあると、ファンとしては嬉しいのだが。スズキなら、やってくれるであろう。
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