現在はトヨタ プロボックスのOEM車として、その名を残すファミリア。しかしこの車名は、マツダを今日(こんにち)の自動車メーカーに育て上げたといっても過言ではない、超名車に付けられていたものだ。そんなファミリアの中でも、第1回日本カーオブザイヤー受賞車であり、月間ベースの新車販売ランキングでカローラを何度も抜いた、5代目ファミリアにスポットを当てていきたい。
文:佐々木 亘/画像:マツダ、トヨタ
【画像ギャラリー】マツダ初の小型乗用車! 日産・トヨタを渡り歩いたファミリアヒストリー一挙公開(25枚)画像ギャラリーデザインのお手本はフォルクスワーゲン?
1980年に登場した5代目ファミリア(BD型)は、ファミリアシリーズの中で最も画期的なクルマだった。
最大の特徴は、シリーズ5代目にして初採用となったFF方式。スペース効率のいいFFのメリットを最大限に生かすため、ボディサイズは先代よりも大きくなり、室内空間はクラストップレベルの広さを誇る。
エクステリアデザインは、当時のフォルクスワーゲンを手本にしたと言われているが、なるほど確かに、ヘッドライトを丸目に変えたらゴルフIのような雰囲気になりそう。シンプルかつ、オーソドックスなデザインで、好き嫌いが少なく飽きの来ないデザインだ。
新語を作り上げギネス記録も更新!?
5代目ファミリアは新規プラットフォームの採用などで基本性能を高め、若年層向けのスポーツ性を謳ったCM戦略なども大ハマりし、爆発的にヒットする。特に、イメージカラーになっていたのが赤で、当時は街中に赤いファミリアが溢れた。
さらに当時の若者文化では、赤いファミリアのルーフキャリアにサーフボードを載せることがカッコいいとされ、実際にサーフィンをしない若者も、赤いファミリアにサーフボードを載せていたことから、この現象を「陸(おか)サーファー」と呼ぶようになった。時代も時代なら、新語流行語大賞を受賞していただろう。
また生産開始から27か月で、世界累計生産100万台に到達した5代目ファミリア。当時の世界最短記録を更新し、名実共に世界ナンバーワンのクルマになったのだ。
世界から称賛された足回り
5代目ファミリアの足回りは、フロント・リア共にストラットの4輪独立懸架式である。リアには2本のロアアームと長いトレーリングアームの組み合わせでトーコントロールを行う機構が採用された。これをマツダは「SSサスペンション」と名付ける。
SSサスペンションは走行安定性の高さで国内外から高い評価を受け、自動車技術会賞を受賞するほどの出来だった。ファミリアの走りは世界から称賛され、モータースポーツでも大きな活躍を果たす。
車名のファミリアは、スペイン語で家族の意味があり、家族そろってドライブをという願いが込められているのだが、5代目ファミリアは家族を作る前から乗りたくなる、魅惑のモデルであった。
クルマが文化を作り、クルマが言葉を生み出す状況は、5代目ファミリア以降も昭和・平成と続いてきたが、2000年代以降は聞かなくなってしまった。それだけ人々の興味が、クルマから離れてしまったということだろう。
人々がクルマに魅了され、人々がクルマを愛する社会をもう一度作ることが、日本を元気にすることにつながると筆者は思う。ファミリアはまさにその原動力となるべきだ。ファミリアという名をOEM商用バンの車名にしていては勿体ない。ファミリアは、また一時代を築けるはずだ。
クルマを愛するユーザーを、まさに家族のようにつなぎ合わせて社会現象を作り出したファミリアに、是非また戻ってきてもらいたい。




























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