車載半導体を手がけるルネサスエレクトロニクスが、EVの性能を左右するパワー半導体の生産から撤退すると発表した。その理由が「中国製パワー半導体のものすごい競争力」。実は中国の半導体産業は、米国からの制約を受けつつも、ものすごい進化を遂げていたのよ!
文:ベストカーWeb編集部/写真:Adobestock(トビラ写真=Raimundas@Adobestock)
【画像ギャラリー】半導体は日本の生命線! なんとか復活を!!(5枚)画像ギャラリーEVの重要基幹部品がまたもや中国優勢に……
車載用マイコンを通じて自動車メーカーとも縁が深かったルネサスエレクトロニクス。コロナ禍以降は電動車の効率アップに欠かせないパワー半導体に着目し、本格的な生産力増強を進めてきた。日本の半導体産業に久しぶりの好材料……と思われた矢先の5月29日、なんと同社が車載用パワー半導体からの撤退を表明した。
EV需要が世界的に失速していることは理解できるのだが、それよりも驚いたのが「中国製パワー半導体の猛烈な普及」という撤退理由。その価格があまりに安すぎて、ルネサスは採算が取れないと判断したというのだ。そのプライスバスターの代表として名前が挙がったのが、ご存知BYDだ。
近年、BYDは圧倒的に安いBEVやPHEVを連発しているが、それができる理由は「電池製造が祖業で高価な電池を内製できるため」と言われてきた。
ところが取り組みの裾野はずっと広かったようだ。ちょっと前の水平対向エンジン自社開発という報道にも驚いたが、車載半導体まで内製していたとは……。実は同社の半導体開発は2000年代まで遡り、いまやその規模は日本のロームを凌ぐという。
パワー半導体は、バッテリーやモーターに次ぐEV進化の鍵であり、こいつの価格主導権まで中国勢に握られてしまうと、他国メーカーはEV開発に制約を受ける。もしアメリカが中国製パワー半導体を高関税品目に加えれば、EVの思わぬ値上げ要因ともなり得るだろう。
シャオミの最新スマホは3nm! ファーウェイも独自OSで復活?
ちょっと時間をさかのぼる。2019年、アメリカがファーウェイをエンティティリスト(貿易取引制限リスト)に加え、以降サムスンもエヌビディアも、それらの半導体を手がけるTSMCも、最先端半導体を中国に輸出できなくなった。
これで中国の半導体開発には一定の歯止めがかかるかと思われたが、現実はそうでもない。5月22日、中国シャオミが発表したハイエンドスマホ「15S Pro」に積まれた独自開発の半導体「玄戒O1」は、回路線幅がなんと3nm。現時点で世界最先端の技術を投じたアップルの「iPhone 16」と同値なのだ。
エンティティリストに載ってWindowやAndroidが使えなくなったファーウェイ自身も、結局は「鴻蒙(英語名ハーモニー)」というOSを自力開発して勢いを取り戻しつつある。中国製AIの「DeepSeek」がその性能で世界を驚かせていることも、耳に新しい。
こうなるともはや、壁を作って国益を守るという発想自体が、無理なんじゃないかと思えてくる。車載用のパワー半導体が、新たな騒動の火ダネとならぬことを願いたい。







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