ハイブリッドカー、プラグインハイブリッド、電気自動車、燃料電池車といった電動車で最大1500W分の電力が使えるAC100V電源が普及してきている。
これは車内でのちょっとしたデスクワークやアウトドアでの調理、あっては欲しくない災害による停電時の給電など、非常に便利な機能である。
しかし、電動車のAC100V電源は家庭の電源とは異なるもののため、注意事項も多く、当記事ではクルマでAC100V電源を使う際の注意点をまとめてみた。
文/永田恵一、写真/TOYOTA、NISSAN、HONDA、MITSUBISHI、ベストカー編集部
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電動車のAC100V電源ってどんなもの?
電動車には駆動用バッテリー(クルマを走らせるためのもの)が搭載されている点を生かし、駆動用バッテリーに残っている電気やエンジン作動により作った電気を、クルマでは直流となっているのを交流に変換して供給するものだ。
特にエンジンで発電できるハイブリッドカーとプラグインハイブリッド、燃料電池車であれば駆動用バッテリーの電気が尽きてもガソリンや水素が残っている限り給電できるので、非常に有難い。
電動車のAC100V電源を使う際の注意点
■電動車から給電される電気自体について
まず意識したいのは、電動車から供給される電気は建物のコンセントから供給される商用電源に対し、供給の安定度に代表される「電気の質」が及ばないことだ。
このことからスイッチオン状態で止まることが許されない医療機器を電動車のAC100V電源で使ってはいけない、起動時の電力が大きい電気製品、精密なデータ処理をする計測機器、きわめて安定した電力供給を必要とする電気製品は正しく作動しない恐れがある、といった点を覚えておきたい。
また、異常な兆候があれば即、使用を中止することも鉄則だ。
■使用する電気製品側の注意点
多くの一般電気製品は車内や屋外での使用を想定していない。そのため、以下の注意が必要となる。
・走行中の振動により故障する可能性がある
・極端な寒さと暑さの中では使えない場合がある。ただし、暖房や冷房による温度調整、日陰に移動することで使用できるようになるケースもある
・水平設置が必要な電気製品は正常に作動しない可能性がある
・粉塵の多い場所や直射日光が当たる場所では使用不可
・防水仕様の電気製品以外、雨や水のかかる場所では使用不可
・アース線のある電気製品を使用する際はラゲッジスペースのコンセントを使い、アース線をラゲッジスペース内のアース端子に接続して使用する
■給電するクルマ側の注意点
●電源コードの発熱防止
コードリールを使う際にはコードが発熱する可能性があるので、コードはリールからすべて引き出して使用する。
●たこ足配線はNG
発熱する可能性があるので、テーブルタップやコーナタップを使ったたこ足配線は不可。
●電源コードの防水など
コンセントに水が付着した際の乾燥に加え、電源コードをドアに挟まないよう注意が必要。
●換気
ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドはエンジンが作動することがあり、クルマの周りの換気環境が悪いと排ガスの充満や滞留する恐れがあるので、換気には注意が必要。
■使用する電気製品の消費電力について
●表記もされているように使用できるのは最大消費電力量1500W以下の電気製品。許容容量を超えると保護機能が作動し、電力供給が自動停止する。
●定格消費電力が1500W内でも、起動時などに大きな電力を必要とする電気製品があると、保護機能が作動し、電力供給が自動停止する。
●ホットプレートや電子レンジといった定格消費電力が大きな電気製品の中にはコンセント単独での使用を必須としているものがあるので、その場合は他の電気製品との併用は不可となる。
といったことが挙げられる。
非電動車でアクセサリーコンセントやインバーター経由で100V電源を使う際の注意
これはメーカーオプションも含め生産時に装着される純正品と12V電源を使うアフター品にわかれ、それぞれを見ていく。
■純正品(消費電力は100Wまで)
●使用条件
エンジンスイッチがイグニッションONの際。
●正常に使用できない恐れのある電気製品
・起動時のピーク電力が高い電気製品
・精密なデータ処理をする計測機器
・50Hzか60Hzという電源周波数の切り替えのある機器
●注意点
・バッテリー上がり防止のため、エンジン停止中長時間100V電源を使うことは避けたい
・当然ながら最大消費電力100W以上の電気製品は使用不可
■アフター品
まず供給される電気が矩形波か建物などの商用電源と同じ正弦波(より質の安定した電気)かを、使う電気製品に応じて適切なものを選ぶことが必要だ。
供給できる電力量に関してはクルマの12Vバッテリーに手を加えていないなら、大きなものはバッテリー上がりの頻発にもつながるので、300W程度にしておくのが無難だろう。
いずれにしてもクルマから使える100V電源は危険なものでもあるので、正しく安全に注意しながら使ってほしい。